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これから書く話は、
『ファイナル・ラウンド』(ジェームズ・ダッドソン著)という
ノンフィクションからとりあげた。
この本はゴルフを通じて父子の情愛を描ききり、
全米でベストセラーになった。
筆者も不覚にも落涙してしまった感動本だ。
そのプロローグの章。
ゴルフライターでもある著者が、ワトソンに
「ゴルフ人生のなかで最悪だった瞬間はいつだったか?」
と質問すると、ワトソンは
「ワールド・シリーズで、サインをねだる男の子を無視して
ロッカールームからさっさと出ていったときだ」
と答えた。
するとその子の父親が追いかけてきて、
「ワトソンさん、あんたは最低の人間だと思う。
うちの息子はあんたの大ファンだったんだ」
といわれたという。
その話をして、最後にワトソンは視線を落とし、
頭を左右にふりながら、冒頭の言葉をつぶやいたのだ。
大体、そんな質問をされたら、普通なら競技上の、
例えばメジャーで敗れたときなどを話すだろうが、
ワトソンは違ったのである。
人によっては些細なことと思われるかもしれないが、
「ゴルフこそ最も名誉を重んじるゲーム」だと信じるワトソンが、
その信念とは逆のことをしてしまった悔悟から
搾り出されたつぶやきだったのである。
ワトソンのワトソンたる、面目躍如の言葉として記憶しておきたい。
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