|
この言葉は1983年、全英オープンが行われたロイヤル・バークデールの最終日、 15番ホールで聞かれた。
ワトソンら4人が首位に8アンダーで並び、 ワトソンはこのホール、3・5mにつけてバーディを狙うパットの構えに入った。
シーンと静まりかえった中、突然子供の泣き声が。 人々が沈黙したのが恐くなったのか、 2歳くらいの男の子が泣き出してしまったのだ。
睨みつけられ糾弾されると思った父親は身をすくめる。 しかし、ワトソンはにこっと笑って 冒頭の言葉をやさしく投げたのである。 ほっとした空気と陽気な笑い声がギャラリーをつつんだ。
ワトソンはそのパットを外したものの、 次の16番でバーディをとり、そのまま逃げ切り5回目の全英オープン優勝を果たした。
ワトソンは温厚篤実、知性の人として知られる。 名門スタンフォードを卒業(これが難しい)して、 もしプロゴルファーにならなかったら、弁護士になっていたろう。
もし、あの時、ワトソンが怒りまくっていたらどうなったろうか? その怒りで自分の心を壊しはしなかったろうか?
あの言葉でギャラリーの中に救われた空気が流れ、 子煩悩、温かい家庭を大事にしているであろう ワトソンを応援するような雰囲気になったことは確かであった。 その場で取材した筆者自身が感じたことである。
|