ゴルフの図書館
ザ・ゴルフフォーラム
2004.09.22
クラブ開発者の裏側(2)
なぜプロはチタンを使わなかった? なぜ使いだした?
■ゲストスピーカー
竹林隆光氏(フォーティーン代表/クラブ設計家)
於:ゴルフダイジェスト社 4階会議室

■プロフィール
竹林隆光
(たけばやし・たかみつ)
世界初の中空アイアンを作ったことでも知られ、フォーティーンブランドのオリジナルモデルを製作するとともに、フリーのクラブ設計家として数々のヒット作を世に出している。その感性と理論の融合した作品には定評がある。

 当初チタンはプロがなかなか使いませんでした。最初に使われたチタンがブリヂストンの230チタンですが、なぜプロはチタンをなかなか使わなかったかというと2つ理由があります。
 ひとつはクラブメーカーがプロ用のチタンを作らなかった。メーカーはチタンはアマチュア向けだとか年寄り向けだよ、と勝手に決めていて作らなかったから、プロが使えるクラブがなかったんです。
 もうひとつはクラブには重心距離というのがあって、この重心距離が普通に作ったチタンのクラブではプロに合わなかった、ということが言えます。どのように合わなかったかについては後ほど説明します。
 前回、チタンのヘッドが大きくなるとボールはどんどん曲がらなくなる、といいました。復習しますと、慣性モーメントと曲がりの関係でいえば、ヘッドスピードが40m/秒の人がスウィートスポットを20ミリ外したとき、パーシモンでは28m、380ccクラスのチタンでは10mしか曲がらないんです。

 次にクラブメーカーが本当に慣性モーメントを大きくするようにクラブを設計していたのかを確認してみます。パーシモンの慣性モーメントは1700、160ccクラスのメタルウッド(J'sメタル)は2300、大型カーボンはエナを測定したものですが2400、大型メタルになりますと2600でこれはビッグバーサを測定、230チタンが2500、Sヤードの250CCが2800、300ccクラスになると3000〜3500になります。これは慣性モーメントの小さい順に並べたのではなく、クラブの古いもの順に並べたのですが、これをみても慣性モーメントは時代とともに次第に大きくなっていることが分かります。。

 また前回、ヘッドがどんどん大きくなってきた場合、380〜400ccまでは慣性モーメントが大きくなってきますので、曲がりは小さくなるといいました。これは逆に言うと、慣性モーメントのメリットを享受できるのは400ccぐらいまでが限界だろうということです。
 では大きくなることによるデメリットはないのでしょうか。デメリットがあると、クラブの進化はそこで止まってしまいます。
 そのときに考えなくてはいけないのが重心距離です。重心距離とはシャフト軸から重心までの距離のことです。
 この重心距離がゴルフスウィングと密接な関係があります。重心距離が自分のスウィングに合わないと、よいショットは打てません。
 パーシモンの重心距離は約32ミリです。パーシモン時代のゴルファーが何をしたかといいますと、重心距離が32ミリのクラブをいかにうまく打つかという練習をひたすら続けたのです。それが10年ほど前に発売になったSヤードの場合は、重心距離が36ミリでした。ヘッドが大きくなったので重心距離も伸びたのです。そうすると、重心距離が4ミリ長いクラブが打てない人達が出てきたんです。

 クラブを振ったときにシャフト軸を中心にヘッドが回転をします。重心距離が長いとヘッドが回転しにくく、短いと回転しやすい。
 長いからいい、短いから悪いということではなく、32ミリの長さの重心距離をうまく振るように練習し続けた人は、この長さでないとうまくいかないのです。そういう人がいきなり36ミリのクラブを振ると、振ったときにヘッドを回転させようとしても回転しないので振り遅れて球は右に出ます。どういう人達が右に出るかというと、ヘッドスピードの速い人です。ヘッドスピードが速い人はインパクト直前までコックがたまっています。それをインパクト直前で一気にリリースします。リリースするということはヘッドが回転させることですから、重心距離が長いとヘッドが回転しにくく振り遅れてしまうのです。

 チタンドライバーをプロが使わなかったのは、チタンのドライバーだから使わないのではなくて、重心距離が長いから使わなかったのです。チタンでも重心距離を短くすれば打てるようになります。プロが一番最初に使ったブリヂストンの230チタンは、230ccだったんですが重心距離は33ミリ。パーシモンで練習を積んできた人達は33ミリだと使えるんです。
 チタンドライバーを私どもで作りましていろんなプロに打ってもらいました。パーシモン派という選手がいて、たとえば倉本昌弘プロは「オレはパーシモンしか使わないよ。もしチタンを使う日がくるんだったらゴルフをやめるよ」という言い方をしていました。他では友利勝良プロ、彼はチタンを打ってみて下さいというと、イヤだとは言いませんが「勘弁して下さい」と。「ボクはパーシモンで自分のゴルフをつくってきたから、死ぬまでパーシモンでゴルフをやります。チタンの試打は勘弁して下さい、自分の調子が狂いますから」と。友利プロが最初に使ったチタンも230チタンでした。

重心距離の組み合わせがキーポイント

 昔のアイアンは軟鉄鍛造ですから、その重心距離は31〜32ミリの間でした。ドライバーとアイアンの重心距離がほぼ同じというのは偶然ではなくて、同じ値だとすごく打ちやすかった、その結果だろうと思います。
 Sヤードのドライバーが出てきたときのキャビティアイアンの重心距離は36ミリぐらいで、バランスがすごくとれています。キャロウェイのグレートビッグバーサの重心距離は42ミリぐらいで、これと普通のキャビティアイアンを合わせるとすごく難しくなります。ところが、当時のキャロウェイのアイアンの重心距離は43ミリですから、キャロウェイのグレートビッグバーサとキャロウェイのアイアンを使うとすごく相性がいいわけです。
 重心距離の組み合わせを間違えるとけっこうスランプになったりするんですが、ほぼ同じ重心距離で選べば間違いはありません。

イメージ写真1
シャフトの延長線と重心との距離が、重心距離。この数値が大きいとコックをタメて打つ人はヘッドの返しが遅れ、ボールが右へ出やすい。そのため、ヒール側を膨らませ(アンダースラング)少しでも重心距離が長くならないような工夫が施される。外形だけではなく、内部構造や素材の変化で重心位置をコントロールしているモデルもある。また、ドライバーとアイアンのマッチングを図るなら、出来るだけ重心距離が同じものを選ぶ。少なくとも、ドライバーの重心距離がアイアンのそれよりも短い組み合わせにした方が、ゴルフは楽になる

 さて、ドライバーの重心距離はヘッドが大きくなるとともに長くなっていくんですが、98年から01年まではほとんど大きくなっていないんです。なぜかというと、メーカーさんは重心距離の長さがどんどん変わっていくと、ゴルファーがついていけないことに気づいていたんです。
 で、どういう方法で重心距離を長くしないようにしたかといいますと、ヒール側を飛び出させる形にしたのです。こうすると、重さがヒール側に増えますから、重心をヒール側にもってくることで、重心距離を長くしないようにしたのです。。
 重心距離が長くなると打ちにくいゴルファーが出てくる。特にヘッドスピードの速い人は打ちにくくなってくるので、重心距離をコントロールする手法でヘッドスピードの速い人、つまりプロでもチタンが打てるようになったのです。。
 プロが使っているドライバーの重心距離は短くなっています。たとえばちょっと前のブリヂストンのツアーステージRV10の重心距離は33ミリ。プロはパーシモンで始めた人が多いので33ミリぐらいが使いいい。
 以前、ジャンボが横浜ゴムのTRというクラブを使って話題になりましたが、この重心距離は33・4ミリ。ヘッドは巨大になっているにもかかわらず、重心距離は短く抑えてある。キャロウェイのERCIIのプロステップは30・1ミリ。2002年モデルの平均値が37・2ミリですから、かなり小さいのが分かると思います。

 ドライバーとアイアンの組み合わせをどうすればいいか。パーシモンのときのように32ミリと32ミリだったら素晴らしいのですが、ドライバーの重心距離が大きくなればアイアンも重心距離の大きいものとの組み合わせ以外はないわけです。

 ドライバーよりアイアンの重心距離が小さいとだんだんゴルフの調子が悪くなってきます。これは一時、女子プロにすごく多かった。
 ドライバーに合うアイアンの組み合わせとしては、同じ重心距離のものがいいのですが、少なくともドライバーよりもアイアンの重心距離が長いほうが許容範囲です。

 毎年プロテストに受かった人と女子プロにクラブの話をさせて頂いていますが、皆さん一番興味があるのが重心距離のところなんです。皆さんスランプになりたくないという気持ちがあり、またスランプになった理由は何だろうかと興味があるわけですが、ほとんどの人がこのドライバーとアイアンの組み合わせの失敗なんです。
 組み合わせは重心距離が、小さい=小さい、中位=中位、大きい=大きいのようにドライバーとアイアンを合わせるのがベストなんですが、中にはこの組み合わせを守っていなくても、なんとか調子を維持している選手もいます。そういう人はそれなりの努力をしていて、何とかスランプになるのを避けています。
 どういう意味かといいますと、重心距離が長いクラブとサラッと振れちゃうクラブ同士の組み合わせは、スウィングがすごく難しいのですが、ドライバーが振りにくければアイアンも振りにくくすればいいんです。振りにくくするには、ひとつは重心距離を長くすることで、もうひとつは重くすればいいんです。クラブを重くすれば振りにくくなりますから。

 重心距離の長いドライバーを使うなら、アイアンは重めにしないとダメなんです。今、スチールシャフトのアイアンを使っている選手は、意図的に振りにくくしていますので、なんとか大きいヘッドのドライバーも同じように振れるわけです。
 一番間違いやすいのは、ヘッドを大きくして軽いドライバーを使って、アイアンも軽くしてしまうことです。これが一番の間違いの元で、アマチュアの人の失敗はアイアンのシャフトを軽くしてしまうことです。
 軽くて振りやすいクラブを使っていると、手で打ってしまいがちです。ある程度重さのあるアイアンを持って体を使ったスウィングをしていないと、何時の間にかドライバーも手打ちになって飛ばなくなってしまう。
 プロでドライバーの重心距離の長いクラブを使って、うまくいっているのは片山晋呉。丸山茂樹はドライバーの重心距離は長くて、アイアンは短い。組み合わせとしてはすごく悪いんですが好調を維持しているのは、アイアンはスチールシャフトを使ってドライバーは極端に軽いシャフトを使っているからです。(つづく)

(次回は、竹林氏の講演を受けて、最新クラブとスウィングの関係を永井延宏インストラクターが説明します。乞うご期待。)

(ザ・ゴルフフォーラムは月2回更新予定です)


ザ・ゴルフフォーラム(The Golf Forum)とは:
日本のゴルフの健全な発達のために、ゴルフ業界に携わる人たちが、ゴルフ文化全般について共に学び、自由に意見や情報を交換できる“場”を作ろう----。そんな趣旨で、東京成徳大学市村操一教授、ゴルフ史研究家の藤岡三樹臣氏、ゴルフジャーナリストの杉山通敬氏が運営委員となり、ゴルフダイジェスト社から場所と人材の提供を受け、ゴルフ百年に当たる2001年2月に発足。以来、様々なジャンルのゲストスピーカーを招き、年に4〜5回の講演&勉強会を続けている。当コーナーでは、それらを再構成して紹介。

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