ゴルフの図書館

BOOKS19番ホール

2007.8.20

ピンチこそ燃えよ!

 先日行われた全米プロで、今年の4大メジャーは全て終了した。メジャー初優勝者が次々と誕生する中、最後の全米プロを制したのは、タイガー・ウッズだった。初日についていた6打差を2日目に一気にひっくり返してトップに立ち、そのまま逃げ切って優勝。改めて世界トップに君臨するタイガーの強さを見せつけられた。
 タイガーの強さは、技術力の高さはもちろんなのだが、どんな場面においても決してあきらめず、攻撃的なゴルフを展開するところにある。しかしそのプレーぶりは、「無謀な攻め」というのではない。常に冷静に状況に対応し、リスクマネジメントを考えた上での攻撃ゴルフだ。
 実は、そのタイガーが学ぶ心理学があった。「タイガー・ウッズも震えてる。」(ゴルフダイジェスト社刊)の著者である心理学博士・ジオ・ヴァリアンテ氏が教える「FEARLESS GOLF」という考え方だ。

「タイガー・ウッズも震えてる。」
ジオ・ヴァリアンテ 著
●B6判・並製・200頁
●1365円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊
『タイガー・ウッズも震えてる。』

「タイガー・ウッズも震えてる。」の副題には「プレッシャーを楽しむゴルフ心理学」とある。普通に考えれば、人間が感じる「プレッシャー」というのは、心に重くのしかかり、人を「押しつぶしてしまう」もので、とてもそれを「楽しむ」ということは困難だ、と思うだろう。

 ヴァリアンテ氏によれば、タイガーにしても、ニクラスにしても、プレッシャーがかかる場面では、まったく平気だ、というものではない。むしろ、普通の人と同じように震えていたりもするのだという。

 しかし、彼らが違うのは、プレッシャーからくる「恐怖心」に打ち克つ「自信」を持っている、ということ。  ショットする前に「このショットを失敗したらどうなるだろう」とか、「これでボギーを叩いたら優勝から遠のく」など、プレッシャーがかかると、「負」の感情が心に浮かんで恐怖に囚われる。ただそれは、恐怖心に真っ向から対抗しようとするからの感情だ。まず興奮を抑えて恐怖を感じて震えている自分を受け入れ、その上で「自分は今、何がしたいのか」を思い描いて、そのためのショットを実践することに集中する。

「このボールをベストポジションに運んで、バーディを狙う」「このパットをねじ込んで優勝に近づく」といった、超ポジティブな意思で自分の心を満たし、燃えていく。要するに、恐怖心に囚われたとき、「どうすれば震えないでいられるか」ではなく、「震えているときにどうやってショットを打つか」ということを考える、というわけだ。

 ヴァリアンテ氏は、こうしたことを繰り返すことによって、プレーヤーの中に生まれる「自信」を「静かな自信=セルフエフィカシー」と呼んでいる。そして、この本では、セルフエフィカシーを持ってプレーする理論と実践法を、詳しく解説している。

 実はこうした考え方は、アニカ・ソレンスタムが、母国スウェーデンのコーチ、ピア・ニールソンから教わった「54ビジョン」の考え方にも共通する。

「18ホール全てでバーディをとり、54のスコアを出すことが目標」。これが「54ビジョン」と名づけた理由。多くの人は「そんな夢のようなこと」と、端から否定しそうだが、誰も「100%不可能だ」といい切れる人はいない。プロでなくとも、全てのゴルファーが54のスコアでラウンドできる可能性を持っているのだ。

 むしろ「『できない』と思った時点で、自分自身の可能性を摘み取っているようなもの」だとニールソンは語っている。


「ゴルフ54ビジョン」
「ゴルフ54ビジョン」
ピア・ニールソン 著
●B6判・並製・230頁
●1575円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊


 だから、「54」の目標に向けて、自分がするべきことは何なのかを考えて、実践する。ニールソンの著書である「ゴルフ54ビジョン」には、ゴルフに対する考え方やラウンドに臨む姿勢はもちろん、日常の具体的な練習法まで、その内容は多岐に渡っている。

 アニカだけでなく、このメソッドに共感して実践しているプロは数多い。宮里藍もその一人で、キャディバッグに「ai54」と刺繍を入れているほどだ。

 一方、そうした学問的、メソッド的なものではなく、もっと人間の感情的な部分で「ゴルフが上手くなる心理」が語られている本がある。「『ありがとう』のゴルフ」だ。


「『ありがとう』のゴルフ」
「『ありがとう』のゴルフ」
古市忠夫・著
●新書判・並製・206頁
●860円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊


 ご存知の方も多いだろう。昨年公開された映画「ありがとう」の主人公のモデルとなったプロゴルファー、古市忠夫氏の著書。古市氏は阪神淡路大震災で被災、自宅も焼失した中、唯一手元に残ったゴルフクラブでプロを目指し、見事60歳でプロデビューを果たし、05年には日本プログランドシニアでも優勝するなど、活躍を見せている。

 そんな経験の中で古市氏が実感したのは、「ゴルフプレーにも『感謝の気持ち』が大切なんだ」ということ。もちろん、震災に遭ったにもかかわらず、生きていられたこと、生きてゴルフができたこと、家族や周囲の人々にゴルフ生活をすることを支え、応援してもらったこと、それぞれに「感謝」なのだが、ゴルフプレーをする際にも、そうした謙虚で前向きな姿勢で臨むことで、上達の度合いがグンと変わってくることを、身をもって実感したのだという。

 とかく上達にやっきになり、ガツガツとスコアを追求するあまり、ひとつひとつのプレーに一喜一憂して感情の起伏が激しいゴルフをしてしまう。そうすると、どうしてもプレーにも余裕がなくなり、ミスを連発してしまう…。ゴルファーがミスを繰り返したり、スウィングに対して限界を作っているのは、プレーヤー本人なのかも。  一度ふと立ち止まり、穏やかにしてプレーする「心」を考えてみるのもいいかも知れない。


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