ゴルフの図書館

BOOKS19番ホール

2007.6.22

今日の反省会

 ゴルフの帰り、僕ら4人はいつもの酒場でいつもの反省会を開く。
『わかったと思うな!』 今日、何回この言葉が頭の中で響いたかしれない。著者の中部さんに天から幾度となく叱られちゃったよ」
 中部ファンの彼は、毎回このセリフを吐く。すると必ず、突っ込み役の彼がこう返すのだ。
「バカか、お前。中部さんがなんで生前会ったこともないお前のゴルフを、わざわざ観察しなくちゃいけないんだ。どうせならもっと上手い奴を見るに決まってるじゃないか」
 ぎーっと目をつりあげ、歯ぎしりしてにらみ合う二人。そこへ「まあまあ」と温和な彼がわって入る。
「まあまあ、反省会は落ち着いてやらなくちゃ意味がないんだから、おさえて、おさえて。で、中部さんはどんなことを叱ってきたんだい?」
 あ〜ぁ、お決まりのパターンがまた始まった。

「わかったと思うな」
中部銀次郎
●B6判・上製・本文256頁
●1575円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊
「わかったと思うな」

 中部ファンが解説を始める。
「≪やっぱダメだ!≫って俺、今日結構つぶやいてたの気づいただろ?」

 いいや、っと彼をのぞいた全員が首を横に振る。誰もお前のひとり言なんか聞いちゃいない。まずはそれに気づけよ。

「あれ、そう、聞いてなかったんだ、みんな。ふうん。まあそれはいいとして、≪やっぱダメだ!≫ってあとで口にするってことは、打つ前にすでに失敗する確率が高いことを自覚していたってことだよね。そんな無謀な賭けはするもんじゃないって中部さんは口をすっぱくして言っているんだよ。例えば――フェアウェイバンカーから、ロングアイアンを使ってナイスショットするなんて、確率からいったらわずかなもの――。成功した試しがないのに何度も挑戦するのは――≪進歩≫という言葉とは永遠に無縁――のことだって」

「ダメだと思ってもやっちゃうのは、先のことを読む余裕が足りないからだろうね」
 温和な彼がゆるやかに話の方向を変え始める。中部ファンは放っておけばいつまでも中部さんだけの話で終始してしまうことを知っているからだ。

 ただし完全に別の話題に移るには、もうしばらく辛抱が必要。
「そうなんだよ! 中部さんが言っているのは、さっきの例で――フェアウェイバンカーから、ロングアイアンを使ってショットすると、何パーセントぐらいの確率で、イメージどおりのナイスショットが出せるか、それを計算してみる――。その余裕が必要なんだよね」

ボールを打たずに上手くなる!
『ボールを打たずに上手くなる!』
石渡俊彦
●A5判・並製・本文144頁
●1470円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊

 僕と温和な彼はうんうんと納得するが、突っ込み役はそんな素直な考え方はできない。
「しかしさ、今はそう思っても、プレー中はそう簡単には冷静になれないよな。だから俺らシングルにもなれないんじゃん」

「そしたら、ショット前にちょっとした運動をする習慣をつけてみるのはどう?」
 よし、話の方向転換に成功。温和な彼は涼しい表情をしながら、内心ではそうささやきガッツポーズをきめているに違いない。彼は続けた。

『ボールを打たずに上手くなる!』には、シャンクをとめたいとき、冬場の悪いライからのショットを成功させたいとき、フォローで≪ひじ引け≫を防ぎたいとき、自分にあったトップを見つけたいとき、脚の疲労をやわらげたいときというように、いろんな悩みを即効かつ確実に解消するエクササイズが紹介されているんだ。そのどれかをショットの前に必ず入れてみる」

「すると?」
 突っ込み役が話を先へ促す。
「それが頭の中を冷静にするきっかけになるじゃないか。例をあげると≪フォローの大きな美しいスウィングをつくる≫には、まず――右腕を地面と水平の角度に保ったまま、肩の付け根から時計回り、反時計回りに――ねじり、――そのまま腕を45度分持ち上げ、同じように肩の付け根から――ねじる」

「こう?」
 みんなが揃って温和な彼の説明する動きを試してみる。

「そうそう、――指は軽く握りグーの状態――でね。これを10回ワンセットで、水平と45度の時計回り、反時計回りをそれぞれ2〜3セット繰り返すんだ。簡単だろ? これをルーティンのひとつとして、腕をぐりぐりしている間に、次のショットをどう打とうか考えなくてはいけないと決めてしまう。運動とくっつけることで、そうだ、冷静にならなくちゃって思い出しやすくなるんじゃないかな」


チョイス7月号
『チョイス7月号』
岡本綾子
『チョイス7月』
●1000円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊

「な〜るほど。そういえば『チョイス7月号』から始まった新連載増田哲仁の『みんなの中心感覚打法』に──ルーティンは球を打った直後から──始まるってあったな。次のショットをどう狙おう、どう打とうっていうのは、打ったボールに到着する前に決めておくべきだって。ただ冷静さが大切って思ってるだけじゃダメなんだな、お前のようにさ」

 突っ込み役はそう言うと、中部ファンを横目で見て、くっくっくと笑ってからかった。中部ファンはむっとして、突っ込み役の胸ぐらをつかみかかる。温和な彼が止めに入っても間に合わない。

 いつも通り、ようやく僕の出番だ。
「じゃ、そろそろ本題に入ろうか」
 みんなの顔をぐるっと見回して僕は切り出した。
 つかみあっていた突っ込み役と中部ファンは互いに手をおろし、温和な彼は黙ってうなずいた。

「次の日程は、来週の水曜日、19時から。六本木の★◎×☆▲で。メンバーは……」
 次の合コンの予定を僕は読み上げた。

中部ファン
「僕は今回の反省会で言ったように『やっぱダメだ!』ってことを後になって口にしたくない。だから無難に☆●ちゃんを狙っていこうかな」

突っ込み役
「な〜にが、無難だ。いまこそ中部さんは『わかったと思うな!』と天からお前に叫んでるだろうよ。お前が確実に落とせる相手なんているわけないだろ。確率を冷静に判断することにしたんじゃなかったのか? ☆●ちゃんは俺がいく」

温和な彼
「まあまあ、二人とも☆●ちゃん狙いでいって、その場判断で脈のありそうな方に譲ることにすればいいじゃないか。その判断は僕がしてあげるよ。さっき紹介した腕をぐりぐりするポーズをドリル通り右手でやったら、中部ファンくん、左手でやったら突っ込み役くんに脈があるサインね。で、僕は▲◎さんでいくから」


「いいのかなぁ? その場判断で。予定が決まったときから戦いは始まっているんじゃないの? 当日、その場に着いてから決めるんじゃとてもナイスアプローチはできないと思うなあ」

 こうしてシャイな僕らは、かたい反省会から始め、ほろ酔い気分になると、いつものように合コン成功計画に移行するのだ。しかしこれほど熱を入れているのに、ゴルフも合コンも結果に進歩がないのはどうしてだろう?


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