その理由は「左右の一体感」の欠如だった。
それまで形にばかりこだわっていた俺は、グリップに関しても、雑誌を読んではプロを真似、スクェアだ、ウィークだ、ストロングだと、いろいろな形を試していた。
しかし『江連忠 新モダンゴルフ 飛ばしのレッスン!』には、形なんてどうでもよく、≪グリップで大事なのは右手の生命線≫だとある。
その意味は――グリップする時左手の親指に右手の生命線が重なるように握って――みるとわかるだろう。――右手の中指、薬指、そして左手人差し指のナックルが――自然に並び、そのまま振ってみると、――左右の一体感を感じられるのだ。
こんな基本中の基本をおさらいするのは、長年ゴルフに親しんでいると、正直、面倒くさい。しかし、この生命線のグリップは、かつて片山晋呉プロが伸び悩んでいた時期に、自分のゴルフをとり戻すきっかけにもなったものだという。
プロも実践。この言葉に弱いのは俺だけではないはずだ。 『江連忠 新モダンゴルフ 飛ばしのレッスン!』には、片山プロ以外にも、伊澤利光プロが学んだワッグルの大切さや、星野英正プロを初優勝に導いた2本足で立っているか? というアドバイスなど、プロたちの意外な悩みや弱点にも触れることができ、さらに克服の鍵となったドリルが紹介されている。 プロも実践のドリルというと、かつてのタイガー・ウッズのコーチ、そして最近はフィル・ミケルソンとコーチ契約を結んだブッチ・ハーモンの『王者のドリル』もおすすめだ。こちらはスウィングに的が絞られている。
ところで、前回のゴルフの反省といえば、あまりに心の余裕がなさすぎた。 たとえば苦手なレイアウトのホールでは、ティショットでかなり緊張するものだが、そんなときは軽いジャンプを2〜3回だけでもしてみれば、肩の力が抜ける。 さらに『ボールを打たずに上手くなる!』には、――人間の体の約70パーセントは液体です。ラウンドを進めると、いつの間にか体の中の液体粒子の密度が偏り、知らず知らずのうちに、体の中のバランスが悪くなっていきます。そこで軽くジャンプすることで、体の中の粒子を調え、バランスのとれた状態に――戻せるとある。 思いのほか効果が高く、簡単に試せるジャンプを、俺はどうしてやらずに済ませてしまったのだろう。この前のラウンドを思い返し、3番ホールの池越えのパー3と、7番ホールの右ドッグレッグ、それに11番ホールの……と悔やむホールの数を指折り数えた。あのときショット前にジャンプしておけば、あんなミスは出なかったかもしれない。 ジャンプだけではない。『ボールを打たずに上手くなる!』には、アドレスで狙いどおり立てなくなってきたとき、ダフリやトップが止まらなくなったとき、斜面や悪いライから打つとき、脚に疲労が出てきたとき、ここ一番で飛ばしたいときなど、ラウンド中に試せる即効性のあるドリルがたくさん紹介されている。 それらを必死に読み、実際に体を動かして覚えたのは何だったのか。肝心のラウンドとなると、興奮したり、ショックを受けたりで、ストレッチのことをすっかり忘れてしまうのだ。 だから俺は長年100を切ったり切らなかったりを繰り返しているのだろう。難しい理論を理解しようとする前に、スウィングの形にこだわる前に、生命線にグリップを重ねることだとか、ちょっとしたストレッチで体の緊張状態をほぐすとか、ごくごく簡単ですぐにできることを習慣化しなくちゃいけなかったんだ。俺はがっくりうなだれた。
……それにしても。 かといって俺には心の余裕どころか、金銭の余裕までないから、新品クラブを購入するのはかなり苦しい。得策は『中古クラブは勉強してから買いなさい』を読んで、中古のいい商品見つけることだろう。 本当は、いまあるクラブを売って費用の足しにできればいいが、その期待はあまり持てない。この本には中古クラブ購入のヒントだけでなく、売って得するコツも書かれているが、買い取り価格を決める「年代」「人気」「状態」の3つの要素について、俺のクラブはすべて欠落しているからだ。 なにせバブル崩壊で痛手を負った俺は、月に一度の練習場通いがやっとで、この前のゴルフの反省といっても、実のところ、それはもう10年も前のことになる。 ちぇっと舌打ちしつつ、それでも愛着のあるドライバーのヘッドを、俺はハンカチでやさしくなでて、キャディバッグに戻した。 |
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