重ねて俺は聞いた。
「練習やプレー中に、ふっと感じる素朴なゴルフの疑問とか悩みってありますよね? 例えば、スウィングは体をどれくらいねじればいいのか、とか、トップの位置はどこにすればいいのか、フィニッシュを大きくとるにはどうすればいいのか、バンカーはどうしてもフェースを開かなければいけないのか……」
「うん、あるよ。いーっぱいある」
「『芯に当たっちゃうゴルフ』は、それらの疑問や悩みを丁寧な回答と、練習用のドリルで払拭してくれるんです」
「それじゃ、≪ボールを打たなくても上手くなる方法≫なんてあるの?」
後輩は強い口調で言い返すと、解説してくれた。 なるべく重いバットを用意したら、ゴルフのグリップで握り、最後までしっかり振り切る。 意識することは、――左足を踏み込むポイント(左足とボールとの距離)、スクェア感覚、左ひじのリラックス感、股関節で体重を受け止める感覚、振り切る感覚――など。 また、フィニッシュはフラつかずに、バランスよくとることが大事で、――トスしてもらったボール(スポンジのボールでも構わない)――を打つと、より効果的だそうだ。 練習量の目安は、――30球を3〜5セット。これを2日に1回くらい――の割合で続けていると――リズム、バランス、パワー――を向上させることができるらしい。 本書にはその他にも、ボールを打たずに上達する練習法として、長い棒を振るドリルや20秒スウィングなどが紹介されているようだ。 「いいドリルがいっぱいあるじゃないか。なんでさっきは、え! なんて驚いたんだよ。おかしな奴だな。それじゃ、今度その本貸してくれよ」
なにやら口ごもっている後輩に構わず、俺は電話を切った。
数日後、この間の後輩からまた電話がかかってきた。今回も
はいはい。どうせだったら、昨日練習場で会ったときに『芯に当たっちゃうゴルフ』と一緒に持ってきてくれたらよかったのに。面倒だと思いつつ、後輩に聞いた。 「え? あ、『シングルになれる人の生活習慣』ってタイトルで、ゴルフが上達する頭のつくり方がわかります」
「頭のつくり方?」 「……はい。それと、『新世紀フェアウェイウッド論』も参考になると思いますよ。こちらは、藤田寛之プロが、フェアウェイウッドをフル活用するコツを、スウィングからセッティングまで解説してくれているんです」
「じゃあ、次の日曜日の夕方に、また練習行かないか? そのときに二冊持ってきてくれよ」 * * * 電話を切った僕は、ため息をついた。やっぱり≪先輩≫は忘れていた。 一緒に練習へ行くたびに、「ゴルフが上達する頭のつくり方がわかったらなあ、フェアウェイウッドをもっと活用できたら、俺はもっとスコアが伸びると思うんだけど……何かいい本知らないか?」と僕に相談してくる。 その度に僕は、その希望に叶える本を探して電話してあげるんだけど、いつだって先輩は覚えていないんだ。 『芯に当たっちゃうゴルフ』を貸すときなんて、≪パッティングのスタンスはどれくらいがいいのか≫知りたいっていうから探してきたのに、コロッと忘れて「ボールを打たなくても上手くなる方法なんてあるの?」なんて別の質問してくるんだから、思わず言葉につまっちゃったよ。 次に練習場であうときも、きっとまたその場で思いついたことを口にして、本を探せって言ってくるんだろうな。僕は憂鬱になった。 先輩のスコアが停滞している一番の原因は、きっと、その時々にしか悩まず、さらに何かを発見しても、次の発見があると、前の発見を忘れちゃうからに違いない。 |
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