一流の選手は、歩く速度からクラブを抜くテンポ、そしてスウィングのリズムが常に一定だという。
アマチュアもそれに習うことは大事で、アニカ・ソレンスタムのコーチ、ピア・ニールソンは『54ビジョン』の中で──歩くときの自分の速度をメトロノームに合わせて記憶する──ことを勧めている。
──ゆっくり歩く人が≪カッチー、カッチー、カッチー≫だとすれば、早く歩く人は≪カチ、カチ、カチ≫。そのテンポを記憶しておいてスウィング前に再現してみる──と、──スムーズで流れるようなスウィング──に近づける。
この間読んで納得したばかりだったのに、すっかり忘れていた。思い出させてくれたひとり言の彼に目を向けると、彼はカッチー、カッチーとつぶやきながら、ゆっくりとティグラウンドへの階段を上った。そしてそのスウィングは……おう! ナイスショット! 歩くテンポと同じようにゆるやかに流れるいい動きだ。
僕はやや早足で、弾みのある歩き方をするため、カッチ、カッチ、カッチ、てな具合に≪心の中で≫つぶやきながら歩くことにした。
それからは大きなミスはなく、ハーフを終えて43。90を切れないでいる僕にしてはまずまずの数字だ。しかし、後半になりカッチ、カッチのリズムが崩れてきた。すると、
「ジャーン……、ジャーン……、ジャーン……」
とまた独り言の彼が、今度はクラブを持たずにスウィングをしながら新たな言葉を発し始めた。よくみると、ダウンスウィングで右足が左足に接近したときにつぶやいている。
ここでまた僕はピンときた。『宮里藍に教えてきたこと』にある体重移動のポイントに、「ジャーン!」が登場していたのだ。 宮里藍プロの父親であり、コーチの宮里優氏によれば、ダウンスウィングでの体重移動で大切なことは、──両方の太股を絞り込むような感じで、右ひざを左ひざに急接近させる──ことだ。 その動きをするためには、──両太股をシンバルに見立てて、≪ジャーン!≫と叩く──イメージを持つといいらしい。 この体重移動ができないと、──まず第一に飛ばないということ。パワーをボールに伝えるには、上体だけでクラブを振っていたらダメ。下半身の大きな力でボールを飛ばしていかなければなりません──。 僕が後半でリズムが崩れだしたのは、きっと下半身の力を使えなくなっていたからだ。昼食後は歩くことがだるくなり、まずリズムが崩れ、そして下半身がスムーズに動かなくなり、上体の力で振ろうとしてしまう。これが僕の悪いクセなのだ。 う〜ん、今日は独り言の彼サマサマだなぁ。 こうして調子を取り戻した僕は、後半スコア42で最終ホールのパー4へきた。パーをとれば、89でギリギリ90の壁を突破だ。そのとき、いつもの彼が 「シュパー、シュパー……」 とまたもつぶやき始めた。目を閉じて空を見上げ、右の手のひらをおでこあてている。この動きは、……うっ、わからない。後ろがつまっているので彼に問いかける間もなく、僕は気になるままにプレーした。その結果、ダボを叩いて91。ま、ゴルフなんてこんなものさ。
プレー後に僕は彼に尋ねた。 ま、現実なんてこんなもんさ。 |
||||||||||||||
| Copyright(C) 2004 Golf Digest Sha Co., Ltd. All Rights Reserved. | |
![]() |
|