ゴルフの図書館
BOOKS 19番ホール
2007.3.2

あの人はプロだ!


『中心感覚打法』


 友人と練習場にいたときのこと。隣り打席の友人がふいにこちらを振り返った。
「なあ、お前知ってる? ここの練習場に、最近ツアープロがきてるらしいぜ」
「ほんとに? 意外に地味なところで練習するんだね。
 さっき受付のりっちゃんとしゃべったけど、そんなことまったく教えてくれなかったよ」
「俺はプロだなんてわざわざ宣言するわけないし、受付の女の子も気づいてないんだよ。しかしさ、俺のダチが見たところでは、ひと目見てわかるって言うんだ。あんなすげぇ球打てる奴は、プロしかいないってえらい興奮してたよ」
「そりゃあ会ってみたい……って、ねえ、あの人じゃない?」
 僕と友人は、受付ロビーから打席に向かってくる男の姿に目を見張った。その男は、190センチはあるであろう巨漢で、自信満々に胸を張っている。体にビタっと張りついた白いシャツは厚い胸板に、いまにもやぶけそうだ。それでいて、背中に物差しを指しているように、姿勢がいい。しかも、オフシーズンだっていうのに、肌のあのドス黒さはなんだろう。
 ひと目見て思う。奴はただ者ではない。


『中心感覚打法』

増田哲仁
●A5判・上製・本文184頁
●1890円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊




 友人と僕は打席をいったん離れ、クラブをかかげながら会話をする振りをして、彼をこっそり観察した。
「ねえ、何か怪しい動きを始めたよ」

「ばか、お前知らないのかよ。あれは『中心感覚打法』にある自然な動きでスウィングするための体操だよ。軸はつくるものではなく、生まれるもので、あの体操をやってるとその感覚がわかってくるんだ」

 その体操とは、
≪1≫スタンスを歩幅に広げ、真っすぐ立つ。
≪2≫頭を前に倒し、足首から前傾して、1歩前に出そうになったところで両ひざを少し曲げる
≪3≫体の右側(飛球線後方)に歩き出すようにして、頭を右にゆっくり大きく動かしながら、右足を体の右側に10センチ程度踏み出す。これがバックスウィングの動きになる
≪4≫ ≪3≫のとき右のつま先、上体、顔は体の右側に向け、左足はかかとを浮かせて、つま先だけが地面についている状態にする
(正面から見たとき、体が「入」という字のようになっていればOK)

≪5≫体の左側(目標方向)に歩き出すようにして、頭を左にゆっくり大きく動かしながら、左足を体の左側に10センチ程度踏み出す。これがダウンスウィング〜フィニッシュの動きになる
≪6≫ ≪5≫のとき左のつま先、上体、顔は体の左側に向け、右足はつま先だけが地面についている状態にする
(体が人という字になるように)
≪7≫ ≪3≫〜≪6≫を繰り返す。

 この運動ができたら、さらに第2の体操へとステップを踏むらしい。また≪1≫のまっすぐ立つのにも、正しい立ち方があるようだ

中古クラブは勉強してから買いなさい

『中古クラブは勉強してから買いなさい』
マーク金井
●新書判・並製・本文222頁
●900円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊

「プロも基本的なことから練習をスタートするんだね」
「そうじゃねえよ。基本を忘れず大事にできるからプロなんだろ。って何か俺いいこと言ってるな」
「ねえ見て、プロのクラブは年代ものだよ」

「お前、俺の言葉を軽くかわしたな? ……まあ、いいや。
『中古クラブは勉強してから買いなさい』によれば――日本を代表するツアープロのなかには、フェアウェイウッドだけは古いモデルを使いつづけている人が――多いんだってさ」

「へえ。あのプロが使ってるのは……」
「テーラーメイドの『ファイヤーソール』だろ。あのクラブと、キャロウェイの『スティールヘッド』は――どちらも2000年以前に発売された旧モデル――だけど、プロの愛用率が高いらしいぜ」

「へえぇ。やっぱプロはこだわってるなぁ。あ、体操やめて今度は座って瞑想みたいなことをしてるよ。そうか、練習に最大限集中できるように、球を打つ前に精神統一をするんだね。やっぱやっぱプロは違う」

幸福論

『幸福論』
塩谷信男
●四六判・フランス装・本文240頁
●1470円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊

「あれはきっと『幸福論』にある≪正心調息法≫だ。100歳超えてゴルフをしている医学博士の著者があみだした呼吸法で、彼は前立腺肥大症も白内障もその呼吸法の助けで克服できたらしい」

「ほう! 君も物知りだけど、プロもいろんなこと知ってるんだね」
「おっプロが立ち上がった! クラブを握った。さあ、いよいよ打つぜ」
 僕らは息を殺した。緊張する。

 とそのとき「おぉ〜!」という喚声が、二階打席から聞こえてきた。プロも動きをとめて、声の方を見上げる。そこへ受付のりっちゃんがやってきた。すると、
「ねっねっねっ、一体どうしたの? 何? この声?」

 僕らはぽかんと口を開いた。今までの貫禄はどこへやら、プロ? は突然でかい図体を縮こませ、体躯に似合わぬ甲高い声でりっちゃんに尋ねた。

「ああ、ツアープロが来てるんですよ。凄い球を打つらしくて、見た人はみんなびっくりしちゃうの」
 プロ? は慌てた様子で二階へかけていった。

「ねえりっちゃん、今の人は誰か知ってる?」
「名前は知らないけど、ゴルフ歴10年で、いまだに150叩いてるらしいわ。何でも俺流で上手くなるって豪語して、レッスン書の類を一切読まないらしいの。その癖ケチで、クラブは人からのもらいものばかりらしいけどね。ふふっ、あの体であの声でしょ? 目立つから噂の種になりやすいのよ」

 僕らは、言葉を失った。


 

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