ゴルフの図書館
BOOKS 19番ホール
2007.2.16

人気クラブはつらいよ


『江連忠 新モダンゴルフ 飛ばしのレッスン!』


 ――クラブの会話
 
「お前、今日何回握られた?」
「う〜ん、覚えてない。とにかくみんな僕を触りたがるんだけど、決断して買おうって人はなかなかあらわれないんだよ」
「ふうん。マニア狙いの俺と違って、一般うけしてる≪人気クラブ≫はつらいねえ。買う気のある奴はともかく、はなから買う気のない奴も、ゴルフショップへ来たついでに、ちょっと噂のクラブをのぞいてみるかって具合で、やたらに構えたがるからな」
「そういう人に限って、下手なんだよ。これだけいろんな人に握られてるとさ、シングルかダッファーかなんて、お見通しさ」
「下手な奴に握られると、痛えんだよな」
「そうなんだよ。そういう人には、『新モダンゴルフ 飛ばしのレッスン!』を読んでもらいたいね。クラブを買う金のない人でも、価格の400円くらいは持ってるだろうからさ」


『江連忠 新モダンゴルフ 飛ばしのレッスン!』

江連忠/山中賢介・作/沼よしのぶ・画
●B6判・並製・本文226頁
●400円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊




「お前ゴルフクラブじゃん。なんでレッスン書を知ってるんだよ」
「まあまあ、野暮な事は聞かないでくれ。それより、『新モダンゴルフ 飛ばしのレッスン!』の中に、――あなたは強く握りすぎていないか?――っていう話があるんだ」
「マメのできてる奴はたいてい強すぎだね」

「そういう人は知らないんだろうね。手を――強く硬く握ればその感性は確実に鈍る――ってことを」

「手は――人間の体の中で最も器用で繊細――だからな」
「そう。江連プロによれば――手は目に見える脳――なんだ。脳をぎゅーっとつぶしたら、その感覚もつぶれてしまうってわけさ。クラブを握る力は、――MAXを100としたら5〜10の力で十分――なんだって。――スウィング中に力が入る人は100パーセント、クラブを強く握りすぎています――って断言しているよ」

「あ〜あ。俺に口があったなら、『お前の握り方は最悪だ』って教えてやるんだけどな。それができないのがつらい。そういえば叩くと必ず『このクラブは俺にはあわない』って口にする奴いるだろ。そういう奴にも言ってやりたいね。『てめえの下手くそが招いたことを人に押しつけるな』ってな」

「僕らは人じゃないけどね。まあ言いたいことはたくさんあるよ。他にも、最初に構えたときと、二回目、三回目に通って構えたときとで、毎回グリップが変わっている人もいるんだ」
「いるいる。『しっくりこねえなあ』なんてぶつぶつ言いながら、グリップをいろいろ試している奴がさ」

陳清波・ゴルフの芯!

『陳清波・ゴルフの芯!』
陳 清波
●B6判・並製・本文192頁
●1575円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊

『ゴルフの芯!』によれば、陳清波プロは、フックグリップからスクェアに切り替えるのに、少なくとも半年は費やしたっていうよ」
「それを、毎週雑誌読んではコロコロ変えてたんじゃ、どれもしっくりこなくて当然だよな」

「ちなみに、陳プロの場合は、――被せて握っていた左手を1日1ミリずつスクェアにしていく作業を繰り返した――らしい」

「しかしさ、スクェアにすると、スライスが心配だともよく聞くぜ。『やっぱり曲がる気がする』とか言いながら、スクェアで握ったりほどいたり、繰り返している奴に会ったことがあるんだ」

「それは――大変な誤解――なんだって。――スクェアグリップはボールを叩けるグリップであり、それでいて曲がらずに飛ばせるグリップ――なんだってさ。スライスが出るのはグリップじゃなくて他の問題らしいよ。その原因を『ゴルフの芯!』の中で解説してくれている」

「まあ何にしても、適当に選んだくせに、このクラブは使いづらいなんて文句たれるのはやめてもらいたいよな」
『プロゴルファー七つの智恵』とかを読んで、ちょっとは勉強してから買ってもらいたいよね」
「また本か。次から次へとお前、クラブのくせして物知りだよな」

「この本には、――10万円をドブに捨てないドライバー選び――っていうように、ドライバー、ショートアイアン、パターなどのクラブ選びのコツを教えてくれているんだ」
「たとえばドライバーは?」

確実に7打縮める プロゴルファー七つの知恵

『確実に7打縮める プロゴルファー七つの知恵』
江連忠
●四六判・上製・本文256頁
●1680円(税込)
●講談社刊

「まず、――「飛び」を求めるか、「正確性」を期待するか、この目的を明確にすることから、ドライバー選びは始まる――」

「どっちもなきゃやだ! どちらかなんて絞れない! なんて声が聞こえてきそうだな。そういう奴には、その目的の曖昧さが、『どのクラブを使ってもなんかいまいち』なんて感想を抱かせ、スコアの伸びが停滞するんだと言ってやりたい」

「解説にも――ドライバーというのはゴルフをするための道具の一本に過ぎませんが、みんなそれぞれ癖があり自己主張をしたがる道具――だってある」

「そう、みんなもっと俺らを大事にしてくれよ」
「1ラウンドしただけで、やっぱこのクラブは合わないなんて中古屋に売り飛ばされたんじゃ、悪くすると、買われては売られ、買われては売られを体がボロボロになるまで延々繰り返すことになっちゃうものね」

「お前のような人気クラブは、とくに危険だよな。かわいそうに……。おっ、なんか下手そうな奴がこっちに向かってくるぜ。あいつには買われたくないな」
「はぁ〜、あの人だよ。もうかれこれ30回以上も通って、まだ購入を決断できずにいる人」

「ぷっ。見るからに、決断力弱そうなおっさんだもんな。丸い体をさらに丸めて、首なんて亀みたいに胴体へひっこんじゃいそうだ。あの垂れた眉と目尻じゃ、とびっきりに明るい笑顔をつくったところで、困り顔の苦笑いにしか見えないんだろうなぁ。くっくっく。毛玉があちこちにできた安っぽいコート着て、汗かいてるよ。こりゃ、手の中もねっとりとした汗でびっしょりなんだろうな。気の毒だねぇ、お前」

 そのおやじは、俺のとなりにいた人気クラブを手にとると、いつものように構え、軽く左右に振るなどして、握った感触をたしかめた。構えをみればわかる、こりゃ下手だろう。とうとう購入する決意ができたのだろうか。おやじはポケットからくたくたの財布出した。とその瞬間、おやじの目が、ちらっと動いた。

 俺を見ている。

「うわ、見るなよ、見るんじゃねえ。俺はもっとさわやかで、上手い奴とゴルフがしたいんだ! 俺はお前のような下手な奴に扱えるクラブじゃねえ! バカ、手を伸ばすな! バカバカ引っ込めろ! 触るんじゃねえ、やめろー!」
 俺は、このおやじに買われてしまった。


 

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