「ボールの背面? なんだそりゃ?」
「ボビー・ジョーンズの『ゴルフのすべて』にこうある。――おそらくゴルフ史上最高のパターの名手であるウォルター・トラヴィスは、パッティング・ストロークをボールの背面に想像上の鋲を刺す行為になぞらえている。わたしもこのアイディアを試してみて、測りしれないほど役に立つことを発見した――」
仲間の説明によると、――ボールとホールの間にボールが通過すべき一点――を決めたら、その――ラインに沿ってボールまで視線を戻したあとで、そのラインがボールを突き抜けてボールの背面にあらわれるところを想像する――。その背面にあらわれた一点に、鋲を刺すつもりでストロークすればいい。
それが、――プレイヤーがストロークに専念できるようにするためのすばらしい方法――らしいのだ。
「ありがとう。さっそくやってみる」
「やりました! イメージ成功! 見事カップイン! 君のおかげだ!」
たとえば、「アプローチでダフリがとまらん! どうすればいい!?」と聞いたときには、「≪左足のかかとをチェック≫」とすぐに返事をくれた。 「『トッププロがこっそり教えるゴルフ開眼のヒント』によれば、左足のかかとに体重がかかっていると、――いくら重心に気をつかったところでスイングするときに左ひざが動いてしまう。軸となる左足のひざが引ければ腰も後ろに――下がり、それがダフリのもとになってしまうらしい。だから、――左ひざを動かさずに軸とするためには、体重をつま先寄りにかけることだ――」 こうして言われた通りに左足の体重を意識したら、アプローチのダフリはたちまち解消した。そして、4年ぶりのベストスコア更新が見えてきたのだ。 しかし、この間中古ショップで購入したドライバーがいまいちしっくりこない。ベストスコア更新のためには、次のパー5で何とかパーをとりたいが、このドライバーでしくじりそうだ。前に使っていたクラブも、フレックスは同じSシャフトだったのに、今度のクラブはそれよりも重く、硬く感じる。 プレー渋滞の待ち時間に、そんな愚痴を仲間にこぼすと、これにも即座に答えをくれた。
「『中古クラブは勉強してから買いなさい』によれば、――基本的に古いモデルほどシャフトが重くて硬い――。だから、――現行モデルのSシャフトがちょうどいいのであれば、古いモデルを買う場合はRをチョイスすべき――なのだ」という。 本書ではその証拠として、現在と約10年前のクラブの≪振動数(cpm)≫を測定し、同じフレックスでどれくらいの差があるかを紹介しているらしい。 こうして仲間に助けられ、いよいよ残すは3ホール。ベストスコア更新を確信し始めた矢先、突如としてスライスが止まらなくなってしまった。例によって仲間に「連絡」をする。答えは今回もすぐに「届いた」。 「『ゴルフのすべて』に≪スライスの治療法≫がいくつかのっているが、その第一として、――バックスウィングを点検して、無理のない範囲内でボールからできるだけ遠くまで腰を回しているかどうかを確かめること――とある。そしてその狙いは、」 「読み終える」前に「同伴競技者」の一人が、俺の名を呼んだ。
「君が打つ番だよ。さっきから何をこそこそと携帯をいじっているんだ。プレー中は携帯をしまっておくのがマナーだろ。なあ、一人でぶつぶつやってないで、もっと会話を楽しもうぜ」 仲間とのやりとりを断ち切られると、俺のモチベーションは一気に下がり、信じられないほどのひどい大叩きをして、俺はベストスコアの更新を逃した。このショックを早く、仲間に伝えよう。俺は、仲間のいる携帯電話を開いた。 |
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