事故に遭う瞬間、走馬灯のように過去の記憶が流れるとよく聞く。僕の場合は、なんと、さっきのティショットでのスウィングが、頭の中に流れた。それも、ひどくスローモーションに。
ちょうど気になっていたので、じっくり眺める。
陳清波プロの『ゴルフの芯!』によると、右ひじが安定していれば、ボールをしっかりと叩くことができるそうだ。――シボリすぎず、浮かせすぎず。トップオブスウィングでは右ひじが左腕より下に位置している状態が必要――だという。
なぜなら、ボールをしっかり叩くためには――両腕と肩の三角形を保ちながら、上体を右に90度向けたときから手首のコッキングのスピードを上げて、トップオブスウィングまで持って――いかなければならないが、そのとき右ひじが上がっているとスピードが上がらなくなるからだ。
理想のトップをつくるには、――コッキングのスピードを上げ始めたときには、右ひじはその位置で止まって――いなければならない。
――そしてダウンスウィングではそのときの右ひじの位置を保つ意識でクラブを――振り下ろす。その動きを実現させるためには、――ダウンスウィングでは右手を体から離すように下ろしなさい――と陳プロは教えている。
脇は締めろと言われるがちだが――右わきを意識的に締めようとすると、右ひじを絞って右ひじをわき腹にくっつけるように――使うため、――腕が縮まり、それがいろいろなミスの原因になる――からだ。
しかし、『ゴルフの芯!』を読むまで、僕は右ひじを絞ることを強く、強く、それはもう本当に強く意識していた。それだけに、スウィング修正には相当苦労したが、地道な練習と、携帯電話で友人と妻が僕のスウィングムービーを再三に渡って録ってくれたおかげで、最近ようやく完成したのだ。
また――右ひじを絞らないとか、右手を体から離すとは、右腕を伸ばすように使うことと考えても――いいと陳プロは言っているが、宮里優プロも『心の強いゴルファーをつくる』の中で、芯を食いやすいスウィングをつくるためには――インパクトでクラブが下りてくるときに、右腕がきちんと伸びてアドレスの状態に戻れているか、というのがポイント――だと言っている。 右腕を伸ばすことは尊敬する二人のプロの意見であるため、僕は必死に練習し、ようやく身につけることができた……と思っていたのに、今日はティショットがいまいちだ。不調の原因は何なのだろう。 いまだ頭の中に走馬灯のように流れつづけている自分のスウィングを、僕は改めてよく見直した。ひじの位置は安定していて、インパクトで右腕がアドレスどおりに伸びている。 ところが、そうか、コックが甘かった。 陳プロ――ただし、あまり右ひじを伸ばすことや体から離すことを意識しすぎると、コックしていた手首が早い段階で伸びてしまうことが――あり、――そうなると大変です――。 宮里プロ――(右腕を伸ばすといっても)右ひじを体に引き寄せながらコックは解かず我慢する状態ができていることが絶対条件――。 とよくよく注意されていたのに、右腕を伸ばすことに夢中になって、コックが甘くなっていた。
(あ〜あ。また練習をイチからやり直しだ)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ どれくらい時間が経っただろう。はるかかなたから、ぼんやり、そして徐々に鮮明に声が聞こえてきた。目を開くと、たくさんの顔が並んでいる。今日、一緒にゴルフをしている仲間たちだ。
「な、なんだ、ぼ、僕は一体?」 ふうん。そうだ、今日はティショットがミスだらけだったんだ。散々練習していただけに、僕は納得いかず、たしかため息をつきながらセカンド地点に向かおうとしていたんだ。 そのとき、フォアーという声が聞こえ、声の方へ顔を向けて、倒れた。……あれ? 何かその一瞬の間にひらめきがあったような。「そうだったのか!」と謎解きをした爽快感に包まれたような記憶もある。しかし、そのひらめきとは何だったのか、ボールに当たったショックのためか、まったく覚えていない。 |
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