スタートホールのティグラウンド、俺は「青い」ティペグを右手でもて遊びながら、どこへ刺そうかと軽く思案した。
このホールは右に大きな池がある。スライサーの俺は右のプレッシャーに弱い。こんなときは、ティグラウンドの右に立ち、広い左を狙いたくなる。しかし、惑わされてはいけない。対角線狙いは安全なようで、かえって危険なのだ。
『ゴルフの芯』の中で、陳清波プロは、対角線狙いを絶対にしないと言っている。――少し間違うと、引っかけボールが出たり右にプッシュアウトする――ことがあるからだ。
では陳プロはどう狙うのかといえば、≪常にまっすぐ≫。ホールを右、中央、左と3等分し、――右サイドが危険なときには左側にティアップして左の帯を狙って――構える。さらにその際、――どのサイドを狙っていくにしても目標に向かってスクェアに立つことが鉄則――だ。
ちなみに、陳プロのいうスクェアとは、――ボールと目標を結んだ線に平行に構える――のではなく、――両足の線が目標を――さすようにする。さらに――足の向きはかかとを結んだ線でチェック。前だと左つま先が左を向いているのでオープンと錯覚する――からだ。
というわけで、俺は左にティアップして、スクェアに構えた。ボールはスライスしたが、それでちょうどよくフェアウェイの中央あたりをキープできた。うん、出だしOK。今日の俺はやっぱり絶好調だ!
しかし、調子に乗りすぎたのか後半に入り、徐々に方向性が不安定になってきた。
ふと考えてハッとした。
『普通のサラリーマンが2年でシングルになる方法』は――真の練習法に目覚めた――ら、2年間でシングル入りできたという、ごく一般的なサラリーマンゴルファーの著者が綴った開眼集だ。
その中には、シングル入りするために訂正しなければならない、言葉の勘違いが紹介されている。すなわち、
★「腕っぷしで飛ばす」→「両脚で飛ばす」
「肩を入れる」→「腰を入れる」もそのひとつで、こう書かれている。 だから、――肩の入り方が不十分だと感じる時には、肩を入れようとするのではなく、左の腰と背中の筋肉を更に強く捻るようにしています。骨盤の左側を押し込む感じです。そうすると左の背筋が強く引っ張られるのを感じます。背中が深く捻れるので肩も自然に深く入ります――。 そっか。肩の入り方が甘くなっていたのも、腰への意識が欠けてきたからかもしれないな。解説のように、俺は――左の腰と背中の筋肉を更に強く捻るように――スウィングした。 ヒュ〜ッ♪ 自分で口笛吹いちゃうほどいい球が出た。
それにしても、今日一緒に回っている大学の後輩は、ラウンドの度に新製品のクラブを持っている。あいつは、親の会社で次期社長のおぼっちゃんだからな。俺なんてぜんぶ中古クラブだ。 しかし、新製品はすべていいと惑わされているようじゃ、アイツも80を切るのは不可能だろう。 『中古クラブは勉強してから買いなさい』によれば、――フェアウェイウッドに関しては、最新モデルを使うメリットはほとんど――ないんだ! アイアンだって――5年前のモデルでも十分――とある。 やたらな情報に振り回されて自分を見失わないこと。ゴルフではこれが大事だ。 さて、残りあと1ホール。ハーフで確認した時点では、予想通り、俺は優勝候補に上がっていた。最後のホールも、ラッキーカラーの青いティペグでティショットから決めちゃうぞ♪ ん? あれ? ……ない。青のティペグを使い果たしてしまった! 前のホールで折ったのが最後の1本だったのか!! 不吉だ。最後にしてラッキーカラーが消えるなんて、ひじょ〜に不吉。ダメだ。俺はもう、ダメだ。
【大学の後輩、おぼっちゃん】 |
||||||||||||||||||
| Copyright(C) 2004 Golf Digest Sha Co., Ltd. All Rights Reserved. | |
![]() |
|