ゴルフの図書館
BOOKS 19番ホール
2006.11.24

わかってるって!


『芯に当たっちゃうゴルフ!』


 ――スタートホール。ティグラウンド。
『芯に当たっちゃうゴルフ』を読んで、フットワークが悪いことが判明した俺は、半月以上、正しいフットワークを身につけることを練習の中心にしてきた。
 正しいフットワークとはすなわち、ダウンスウィングではベタ足、そして左足がベタ足のままフィニッシュすることだ。しかし、あまり熱心に練習していたので、その成果がいま試されると思うと、極度の緊張に襲われてしまった。足が小刻みに震えている。こんな状態でベタ足を保てるかのだろうか。
 と不安なままティショットしたら……へなちょこな球が出て、しかも深いラフの中へ落ちた。やっちまった、おそらく右足かかとが極端に早く上がってスピンアウトしたに違いない。
 反省しながらとぼとぼとティグラウンドを降りると、一緒に回っているA君に言われた。
「右足のかかとが上がりすぎだよ。ダウンスウィングの間はベタ足がベストなんだ」
 得意げなA君に向かって俺は叫んだ。
(そんなことは言われなくても、わかってるよ!)


『芯に当たっちゃうゴルフ!』

江連忠
●B6判・並製・本文192頁
●1575円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊




 気を取り直してセカンドショット。
 深いラフの攻略はどうだったかなぁと、俺はレッスン書の数々を思い浮かべた。

『伊沢利光の結論[アプローチ&パター]』には深いラフのポイントが3点あげられている。

≪1≫体重配分は左足7:右足3の割合で構える
≪2≫ボールの位置は右足の外。ハンドファーストの度合いを強くする
≪3≫ボールをどこに落とすのか明確に決めてから打つ

≪1≫≪2≫は、芝の抵抗に負けないように、鋭角軌道でインパクトするための方法だ。

 そして≪3≫の落とし場所は――フェアウェイからの時よりも手前に設定――する。なぜなら、――深いラフからのショットはスピンがかから――ないため、――フェアウェイから打つ時と同じ地点にキャリーを設定すると、ボールは必ずオーバーして――しまうからだ。

≪2≫と≪3≫はいいとして、俺の場合、体重配分をうまくできるかが問題だ。ティショットで失敗したばかりとあって、うぅ〜緊張する。

 ……

 俺はことごとくプレッシャーに弱い。今回もあえなく失敗してしまった。と思っていたら、やっぱりきたよ。

A君「インパクトがちょっと弱かったんじゃない? 深いラフは鋭角に打った方がいいんだよ」
(だからわかってるって!)

伊沢利光の結論[アプローチ&パター]

『伊沢利光の結論[アプローチ&パター]』
伊沢利光
●A5判・上製・本文192頁
●1890円(税込)
●池田書店刊

 くやしいので、おかえししてやることにした。A君はティショットでうまく花道に運んだが、このホールの花道は、彼の苦手な急な左足下がりの斜面だ。

『秀道流GOLF』には、このような状況のときは――ボールを右足前に置いて、ピンまで転がしていくのが最適――だと書かれている。

 くわしくいうと――アドレスで転がす体勢をつくり、フォローでクラブヘッドを低く出す。左足下がりなのでロフト角が立つため、ランが多く出ることも計算に――入れるのだ。さあて、A君はその通りに打てるだろうか。

 ……

 くっくっく、失敗した。グリーンにいったんは乗ったものの、ボールは反対岸に転がり落ちてしまったのだ。言ってやろう。
「A君さあ、ランの読みが甘いよ。それにフォローでヘッドが浮きすぎてたんじゃない?」

 言われたA君は、瞬時に顔が真っ赤になった。
「そんなことは自分でわかっていたよ。いちいちアドバイスしてくれなくて結構!」

 その言葉に俺はカチン! ときた。
「はあ? 先に余計なアドバイスをしてきたのはA君の方だろう。俺は君よりよっぽどたくさんの本を読んで勉強しているんだ。浅知恵でものを言うのはやめてくれ!」
「浅知恵だって? ふん、どれだけ本を読み漁っているのか知らないけど、その割にちっとも上達していないじゃないか」
「うるせえ! お前よかよっぽど俺のが上手いだろう!」
「お前の方がゴルフしてるんだから上手くて当たり前だろう!」
「ゴルフは回数の問題じゃないんだ。だからお前は浅知恵だって……」

田中秀道の秀道流GOLF

『田中秀道の秀道流GOLF』
田中秀道
●B6判・並製・本文216頁
●1575円(税込)
●日刊スポーツ出版社刊

「まあまあ」
 俺たちの間にC君が割って入ってきた。彼は言った。

「ゴルフは楽しくやろうよ。それに、二人とも自分たちのことばかりに夢中になっているけど、ちょっと足元を見てくれ」

 俺とA君は同時に、視線を地面へ落とした。ボールが2/3以上、土の中に埋まっている。

「どうしたんだ? このボール」
 俺とA君は喧嘩していたことを忘れて顔を見合わせた。すると、俺らの肩に置かれたC君の手がプルプルと震え出した。な、なんだ、なんだ?

「君たち、言い争いにあまりに夢中になりすぎて、僕のボールを何度も踏みつけ、あげく土にめりこませたんだよ」
 C君は自分のボールが粗末に扱われた怒りに打ち震えながら続けた。

「君たちは何もわかってない! ベタ足だ、フォローがなんだって、こまかいことばかりちまちま考えすぎなんだよ! そんなに高いレベルに達してないだろう! もっと全体像に目を配れ! 他のプレーヤーのボールがどこに落ちたかくらい把握しろよ! どっちの方が上手いかだって? そんなのは100を切ってから言え!」

 俺とA君はC君の剣幕にあっけにとられながらも、同時に頭をさげてつぶやいた。
「ごもっともです」


 

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