『ゴルフ狂、川上哲治』。元プロ野球選手の川上氏のゴルフエッセイだ。打撃の神様といわれ、たくさんの人に慕われてきた川上氏だけあって、エッセイの中にも様々なゴルフ仲間が登場している。それらのエピソードを俺は拝借することにした。
「俺らのエピソードなんて大して面白くもないから、友人に聞いた話を教えてあげるよ。そいつは野球関係の職業なんだけど、きみ、野球好きだっけ?」
「でも王貞治監督と星野仙一元監督なら知ってるよね。――二人は実に対照的なゴルフをする――らしいんだ」
彼女は期待に胸をはずませている様子だ。とっても可愛らしい笑顔を俺に向けてくれている。これはいけるな。俺はにやけそうになるのを必至にこらえて、覚えている内容を話した。
――王は、豪快でこだわりのゴルフをする。セカンド・ショットはどんなときでもピンをデッドに狙っていくからほとんどオーバーする。刻んでパーを狙うようなゴルフはまずやらない。OBを打っても、くよくよしないし、自分の好きなようにゴルフをやっているように見える――。
「王さんって素敵っ! ワイルドですね!!」
――スコアにも賭の勝負にもとことんこだわる――、――ちょっと調子が出ないとギリギリ言って悔しがる。血圧が上がるのも無理は無い――ってさ。
「そういう、少年っぽいっていうんでしょうか、やんちゃな人もいいなぁ。先輩は王さんタイプですよね?」
俺の言葉に、彼女はにこにことしてご満悦の様子だ。サンキュー川上さん。彼女とのムードが一層よくなり、俺は有頂天だった。
「先輩は、年上の人とは回らないんですか?」 マナーがいいのはそりゃ、女の子と回っているからだろう、という本音は隠し、今度はどう切り抜けようかと、一瞬、思案した。 そうだ、『ゴルファーのスピリット』がいい。マナーをテーマに、いろいろな人のゴルフへの在り方が書かれている。 「たまにだけど、年上の人とも回るよ。西村さんていう婦人科の先生がいてね、彼女は言い訳を本人よりも先に言ってくれる、とても気持ちがいい人なんだ。たとえば……」 ――(私の)バンカーのボールが目玉でした。やっと出ただけで、グリーンには乗らず、舌打ちしたいところなのですが、頭上から先生の「大目玉なのによく出したなぁ、さすがぁ」の一声に、「どうも」と機嫌よく礼を言うことになりました――
「素敵ぃ! みんながいい気持ちでプレーできるように、気遣ってくれるんですね」
「それは君があまりにも、素敵だからさだって。ゴルフ行こう、ゴルフ行こうって、あんまりうるさいから行ったけど、二度目はないわね」 「あ〜それなら、友だちいないからじゃない? 女の子との浅い付き合いしか知らないから、人を見る目がないのよ。ゴルフ仲間は? って聞いたら、『ゴルフ狂、川上哲治』と『ゴルファーのスピリット』からエピソード拾ってるんだもの。私はぜ〜んぶお見通しだったわよ」 |
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