『銀のゴルフ』は中部さんのゴルフ理論を漫画化したものだ。1話4ページのショートショート・ストーリーなので、さくさくっと読めるところがいい。なにしろ僕には一週間しか時間がないのだ。
パラパラとページをめくると、≪脳天一本の髪の毛≫という話に目が止まった。始めにこう書かれている。――中部銀次郎は悩んでいた。アドレスの時の頭についてである――。
なぜ頭について悩んでいたのかというと、――頭は人間の体の中で一番重く放っておくとすぐにうなだれてしまう――。そしてうなだれると、ミスショットをする。
さらに――緊張や不安に駆られると、まるで亀が甲羅に閉じこもるように、頭が肩の中にめり込んでいく――。――「これまたスムーズなスウィングは望むべくもありません」――。
そうか頭がずれたら、スウィング軸もずれてしまう。そうすると、スウィングのすべてが崩れてしまうわけだ。だから中部さんは、悩んだ。
――頭の位置を正しくキープし、脳天から尾てい骨にいたるスウィング軸をキープするには、どうすればいいのか――。
そういえばある禅僧が、坐禅中に妄想に惑わされている人は、自然と頭が垂れていくと言っていた。アドレスも心に迷いがあると、無意識に頭が動いてしまうのだろう。
中部さんは頭の問題をどうやって克服したのか。それは、――天空の神が(脳天の)髪の毛一本を引っ張り上げている――というイメージを持つことだ。――すると重たくうなだれがちの頭がスッと起きる――。
髪の毛一本ってところがミソだろう。よく、頭のてっぺんから出ているひもを、天に吊られているようにと言ったりするが、イメージしてみても、自分の頭から出ているはずの糸が、いつのまにかプツリと切れている。
ああ、僕は吊られていたんだっけ、とか寝ぼけたことを口にして、もう一度イメージしよう、と再チャレンジしてみるが、やはりしばらくすると、またプツッと切れる。
ところが、自分の髪の毛を引っ張られているとイメージすれば、動いたら痛そうな気がするじゃないか。コップに入った冷たい水を熱湯だと思い込めば、手にかけられたとき「あつっ!」と叫んでしまうのと同じだ。自分の髪が一本、天に引っ張られていると思い込めば、頭が動いたときに「イタッ!」と感じるだろう。
……か・い・が・ん。僕は胸がジーンとした。
しかし次の日、庭でアドレスをとってみると、なんだかぎこちない。僕は融通のきかないタイプで、姿勢がまっすぐになったら、今度は重心をどうかけるべきなのかがわからなくなってしまった。 急いで書店へ走り、『ボールを打たずに上手くなる!』という本を購入した。プロゴルファー石渡俊彦プロによるゴルフエクササイズが紹介されている。 この中に≪正しいアドレスの姿勢をつくる≫エクササイズがあった。
★1★ 肩幅より少し広めのスタンスをとる アドレスするとき、僕はいつもまっすぐ立った状態から徐々に体を倒していたが、それとは反対に、倒した状態から体を起こした方が、正しい姿勢をつくりやすい。 下半身の力を入れるべき場所がよくわかり、骨盤の正しい位置がわかる。骨盤の位置は、スウィングを安定させる上でとくに重要だ。しかし体を倒していく方法だと、前傾角度こそいい状態が保てるが、下半身がどうあるべきかが曖昧になる。 ああ、本日もまたアドレス開眼。中部さんのイメージとともに、このエクササイズを続けていけば、ひょっとして、シングルのあいつより僕はアドレスが上手くなっちゃうかもしれない♪
――そして練習場。 アドレスだけに集中していたら、僕はお地蔵さんになってしまった。始動の仕方がわからない。動き出せずに、僕はぴくっぴくっと痙攣を繰り返す。そんな僕の様子に笑いをこらえながら、友人は約束どおり、僕にアドバイスをくれた。 「ゴルフはバランス、リズムが大事! ひとつのことに執着するな!」 |
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