ゴルフの図書館
BOOKS 19番ホール
2006.10.6

雲の上から


『ゴルフの大事』


「銀さん、最近調子はどうですか?」
「ああ、夏さんか。調子ったって幽霊ですから、別段いいところも悪いところもないですよ」
「いやいや体のことじゃなくて、ゴルフですよ」
「ああ、ゴルフね。う〜ん、今はちょっと落ち込んでますね。まあ、気楽にやってればそのうち戻るんでしょうけど。しかし、雲の下のプレーをのぞいていると、調子がまた狂ってきちゃうんですよね。最近の人は『ゴルフの大事』がわかってないなぁ」


『ゴルフの大事』

中部銀次郎・三好徹
●B6判・フランス上製・本文232頁
●1575円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊




『ゴルフの大事』ね。最近亡くなってこっちに来たゴルファーたちが、生きている間に読んで面白かったって騒いでましたよ。早くこっちにも回ってくるといいんだけど。死んだときに遺族が棺に入れてくれないことには、こっちまで届かないからね。ところで、それってどなたの本でしたっけ?」

「中部銀次郎と三好徹の対談形式なんです」
「あ、そりゃまた。それで『ゴルフの大事』がわかっていないというのは?」
「今の人って、余計なことをごちゃごちゃ考えすぎるんですよね」

「たとえば?」
「クラブ選びにしても、やれロフトは何度だ、シャフトはどれだ、既製品じゃ自分に合わないから鉛を貼らなきゃならんと、あれこれ悩みすぎます」
「アマチュアの多くは、ロフトの1度の差を感じられるほどの腕前かどうか怪しいですしね」

「僕(中部銀次郎)のクラブ選びはそりゃシンプルですよ。ドライバーなら──ロフトが多くて薄めのヘッド──。パワーがないですから、楽に上がって曲がらないことが選択の基準なんです」
「そういえば、銀さんのドライバーのスペックは、──ロフトが12・5度でシャフトR──でしたね」

「ええ。でも一般アマチュアだったら、ウッドは4番1本だけでもいいと思っています。──距離的には、ほとんどドライバーと大差ないんですよ、一般アマチュアなら──。でも、欲があるでしょう? わずかでも飛距離を出したい欲がありますから、4番1本にしぼれる人はそういませんね」

「最高飛距離っていうのは、たいていの人がランも入れた距離をいってますからね」
「そう。それで、──残り距離を聞いて打つと、ショートする人が多い──んです。──これをやっているうちは、いつまでたっても上手くならない──」

「いやぁ銀さん、あんたはやっぱりいいこと言いますね」
「夏さんはもっといい言葉をたくさんご存知でしょう?」

「まあ、仕事でしたから。『ゴルフへの恋文』(夏坂健著)にもね、いい言葉をたくさん書いたつもりです。たとえばヘンリー・オーバル卿という人がいて、この人は言ってみれば≪ゴルフの申し子≫だったんですよ」

「ゴルフの申し子?」 「ええ。──1850年に出版された自伝『私版紳士録』によると、1886年に誕生した場所がゴルフの聖地セントアンドリュースだった。その後、まるで全英オープンの開拓地を選ぶかのようにプレストウィック、ミュアフィールドと転居して、中年から構えた別荘がウィンブルドン公営コースの隣接地──だったそうです」

ゴルフへの恋文

『ゴルフへの恋文』
夏坂健
●四六変型判・上製・本文232頁
●1470円(税込)
●新潮社刊

「本当に? いや、凄いな」
「それだけじゃないんですよ。──1953年に亡くなったときも、クロウバラでの18ホールが終わった直後にシャワールームで急死──したんです」
「そこまでゴルフに愛されてたってうらやましいね。それで肝心な本人はゴルフが好きだったの?」

「好きも好き、大好きですよ。卿は毎日正午になると、家からコースへ出発したそうですが、その習慣は一日も欠かしたことがなく、時間も狂うことがなかった。だから市民は、卿のコース通いで正午を知ることが出来たとまで言っているんです」
「大したもんだね」

「そんな彼ですから、ゴルフの本質がよくわかってたんだなあ。──なぜ、ゴルフは面白いのか? なぜ、ゴルフは難しいのか──その答えを、彼なりに考えて、先の自伝に書いているですよ。それは、──二度と同じ場所から打てないから──」

「ほう! たしかに一日だって同じ条件はないよね。気候も変わる、芝も変わる、心理も変わる、コースは変化し続けている」
「卿はゴルフについて──永遠に未知との遭遇に直面するのが宿命。面白さとむずかしさの原点がここにある──と言っています」

「さすが夏さん。いい言葉を探すねえ」
「はは、どうも」

──「お二人さんのいう通り、子供にゴルフを教えるときも、そういう感性を伝えることを大切にしたいですね」
【銀さん、夏さん同時に】 「おお! アーさん」

【アーさん】
「私の子供は、まあその、自分でいうのも何ですが、世界で超一流のゴルファーですよ。タイガー・ウッズっていうんですけど、もちろん知ってますよね? 私はタイガーにゴルフを教えるとき、一度も怒ったことはありません。ゴルフは技術を押しつけても仕方ないですからね。夏さんの話に出てきた卿のように、自分で考える力を養ってあげなくちゃね」

ゴルフライフ極上の愉しみ

『ゴルフライフ極上の愉しみ』
川田太三
●新書判・並製・本文192頁
●700円(税込)
●青春出版社刊

【夏さん】
『ゴルフライフ極上の愉しみ』でも、アール・ウッズさんの教育論をほめてますよ。──ジュニアゴルファーを持つ両親だけではなく、多方面で理想的子育て論として注目されている──そうですね」

【アーさん】
「いやいや、そんなこと……あるかもしれませんが」
【三人】 アハハハハハハ!

 

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「まったく、困るんだよね。あの三人」
「なにが?」
「ほら、ここはな〜んにもない地獄でしょ? な〜んにもすることがなくて、同じ仲間と話すかぼうっとするしかない地獄。つまり暇なわけ」
「だろうね」

「そしたら、あの三人はゴルファー同士だってことに気づいてから、ああやって≪モノマネ≫に懲り出したんだよ」
「え? あの人たち、銀さん夏さんアーさんじゃないの?」
「田中さんと杉山さんとマイケルさんだよ」
「へえ〜。それにしても渋いモノマネだよね。ゴルファーにしかわからないじゃん」
「ゴルファーは死んでもずっとゴルフをしていたいんだろ。でもここじゃプレーはできないから、仕方なく、ゴルフに対する教養がどれほどあるか、ああして競っているんだよ」


 

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