ゴルフの図書館
BOOKS 19番ホール
2006.9.22

ゴルフの超能力


『ゴルファーのスピリット』


「きみ、なにやってるの。君より先に打つ人がいるんだよ。ほら、後ろをみてごらん。彼がいま打とうとしているじゃないか。自分のボールにばかりきをとられてちゃいけないよ」
「は、はい。すみません……」
 ふ〜。今日のラウンドで怒られたのは何度目だろう。俺のじいちゃんくらいの年齢の人と回っているけど、彼に叱られるたびに、≪自分がマナーに欠けていることをつくづく思い知らされる≫。
 そうして落ち込んでいると、ガミガミ叱っていたじいさんが、「ほら、元気だせ。そしてこれを読みなさい」と今度はやさしい声で語りかけてきた。じいさんから俺は一冊の本を受け取った。


『ゴルファーのスピリット』

鈴木康之
●新書判・並製・本文192頁
●900円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊




『ゴルファーのスピリット』。――上手いゴルファーよりも美しいゴルファー、誇りあるゴルファーになろう――と書かれてある。じいさんは話し始めた。

「当たり前でしょうが」「考えたら分かるでしょ」。これは、『ゴルファーのスピリット』の中で、ある紳士が言ったセリフだ。

 その人は私のように口やかましかったようで、たとえば初心者がバンカーに入れば――あんた、いまどこから入ったのっ――と一喝するし、キャディさんに残りの距離を聞けば――あんた目がないのっ――とあきれて怒鳴る。

 そして叱られた著者が、なぜそうしてはいけないのだと尋ねると、「当たり前でしょうが」「考えたら分かるでしょ」と答えていたらしい。

 君もきっと今日のラウンドで私と回るのはもう懲り懲りだと思ったろう。だったら君、考えなさい。ゴルフはマナーがうるさいっていうけどね、でも頭をつかっていれば簡単なんだ。

 その本の著者が言ってるよ。――考えると、たいていのことは、それがコースの中でいいことかいけないことか、なぜか、なぜそうすると得なのか損なのか、分かってくるものでした――。

 その著者の作品に『ピーターたちのゴルフマナー』があるけど、これはその紳士に叱られつつ、考えていったことをノートに書きとめているうちに出来上がった作品らしい。

 だから君だって、今は「≪自分がマナーに欠けていることをつくづく思い知らされる≫」なんて思っているかもしれないけど、ちゃんと考えていれば、マナー本一冊書けるくらいの知識を持てるんだ。

キャディに乾杯!

『キャディに乾杯!』
リック・ライリー/山本光伸・訳
●四六判・上製・本文240頁
●1575円(税込)
●ランダムハウス講談社刊

 俺は驚いた。
「ど、どうして僕の思ったことがわかるんですか!?」
「ふっ、考えなさい。考えればわかるよ」
「いやいや、わかりませんよ。あ、まさか。あなた超能力が使えるとか? なんちゃって。まさかね」
「超能力ねえ。そうだよ、超能力があるんだ」
 うっそだぁ、と私がからかいの目を向けると、じいさんはさも軽蔑した表情で話を続けた。

 君ねえ。超能力っていうのは特別な力じゃないんだよ。たとえば、『キャディに乾杯!』には盲目のゴルファーであるボブ・アンドリュースの物語が紹介されているが、ボブだけでなく、妻のティナにもひどく感心させられる。

 彼女はボブのコーチ(盲目者のゴルファーたちはキャディのことをそう呼ぶ)をしているが、このコーチの仕事っていうのはそりゃ大変なものだ。

――1球ごとに、人のクラブフェースを低位置にセットする――し、――1球ごとに、肩や腰や足の位置を調節してやらねばならない。距離を測り、クラブを選び、構えさせ、風やライを計算しなければならない――。

 きみ、これこそ超能力だと思わないかね。つまり、ティナはボブがプレー中に望むすべてのことがわかるんだよ。使いたいクラブはどれか、どこを狙いたいのか、しっくりくるアドレスがとれているのか、全部ね。

 これは理論で考えるばかりでなく、相手の心になって、コーチを務めているからできることだろう。だからね、私も叱られる君の気持ちになれば、君の思ったことくらいすぐに見当がつくんだよ。

 俺は返す言葉もない。ますますしょげた俺を見て、「まあそう落ち込まずに、君も盲目になったつもりでプレーしながら色々なことを感じてみなさい」とじいさんは励まし、さらに話を進めた。

芯に当たっちゃうゴルフ!

『芯に当たっちゃうゴルフ!』
●B6判・並製・本文192頁
●1575円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊

 そうだ、マナーばかりとやかくいってゴルフを嫌いになったらいけないからね。スコアアップのコツを教えてあげよう。いいかい「目が見えすぎる」ってことは、かえって不便になることもあるんだよ。

 盲目のボブは――カートを降りて歩いていくと、ぴったり自分のボールの位置で構えに入る――。なぜかって聞けば――きみ(コーチ役をした著者)がカートを降り、ボールの方へ歩いていくだろう? 私はその声に従っているんだ。そしてきみが頭を下げてボールのほうへ目をやれば、どこを見ているのか察しがつく――と答えるんだ。

 なかなかそこまで感覚を研ぎ澄ますのは難しいけどね、目をつぶってスウィングしてみるくらいはやってみるといい。『芯に当たっちゃうゴルフ』で江連忠プロもこう言っている。

――スウィングは目に見える情報によって、大きな影響を受けるということを知ることも大切です。目を開いているときにはできなかった動きが、目を閉じるとできるということも多いからです――。

――ですから、まずは目からの情報をカットしてみます。つまり、目をつぶってスウィングするのです。視覚をカットすることにより、他の感覚が鋭くなります――。すると、――自然な前傾角度や体の動きが――わかるそうだ。

 いわれた通り、俺はさっそく目をつぶり、クラブを振った。正直、怖い。クラブを上げるのが不安だ。それだけ、目に頼っていたということだろう。

 ゆっくり何度か繰り返していると、クラブの存在が大きくなる。素振りをする音が聞こえる。スピード、力の入れ方によって音の重さが、速さが、大きさが違う。調子に乗った俺は、ビュンビュンと連続素振りをした。すると、

 ガンッ! 何かにぶつかり、クラブから手に、嫌なシビレが伝わった。嫌な予感。そっと目を開けると、じいさんが倒れていた。俺か? 俺がやってしまったのか?

 ************
 気付けば俺はベッドの中。ここは俺の部屋。そうか、夢だったのか。ほっとしてコースへ出かけた。そしてメンバーには、夢に出ていたじいさんがいるじゃないか! そんな馬鹿な。おろおろとプレーしていると、「きみ、なにやってるの。君より先に打つ人が……」

 夢で聞いたセリフだ。こ、これは、正夢? 俺は超能力を起こしちまったのか?


 

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