ゴルフの図書館
BOOKS 19番ホール
2006.9.1

隣でガサゴソ


『ボールを打たずに上手くなる!』


 ドゴン! ドゴン! ドゴン! ドゴン!
 ある日の早朝、マンションの隣の部屋から大きな音が響いてきた。
「なんなんだ一体」
 私と妻は飛び起き、顔を見合わせた。「うるさいって言ってこようかしら」眉間に深く皺を寄せて、妻が立ち上がりかけた。私は「まあまあ」と妻の腕をやさしくつかみそれを制す。決して、素顔の妻を外へ出したくないわけではない。
「どうせ、ゴルフへ行くのにもう起きなければいけない時間だ。目覚ましがわりになったと思えばいいじゃないか。あんまりうるさかったら不動産屋を通じて注意してもらおう。直接いうと角が立つ」
「ふうん。隣は美人なOLさんだものね」
 決して、私の心の女神である隣人に、小言を言って嫌われるのが怖かったわけではない……。


『ボールを打たずに上手くなる!』

石渡俊彦
●A5判・並製・本文144頁
●1470円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊




 しかし、いつまでたっても隣からの音はおさまらなかった。さすがの私も腹を据えかねる。朝食を食べながら、貧乏揺すりが激しくなっていった。よし、隣から漏れてくる音が、どれくらい耳ざわりなのか、こちらも音を立てて教えてやろう。

 どうせならラウンド前のストレッチを兼ねようと、『ボールを打たずに上手くなる!』にある「アッパーブローをマスター」するエクササイズをすることにした。

 アッパーブローは、ディープフェースに設計されたドライバーの特性をいかすのに有効だが、意識しすぎると、引っかけが出やすくなる。これは、下半身が左に流れ、頭だけを右に倒してアッパーに打とうとしていることが原因だ。

 正しくは、体重5:5から、右足6:左足4くらい、右足に重心を残して、クラブヘッドを遠くに投げるイメージでスウィングしなければならない。

 その感覚を覚えるには、メディシンボールなど、重さのあるボールを両手で挟んで持ち、目標方向に投げればいいそうだ。そしてこの目標方向を、私は隣に面する壁に決めた。

 ドゴン! ドゴン! 隣の音に負けじと私は力一杯にボールを投げる。(おそらく、力んで投げたら意味はないが、今回は特別だ)
みるみる上達!新発想ゴルフ練習術

みるみる上達!新発想ゴルフ練習術
日刊ゲンダイ特別編集
●新書判・並製・本文192頁
●780円(税込)
●徳間書店刊

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 私はいま、ものすっごくイライラしている。中年夫婦が住んでいる隣から、ドゴン! ドゴン! とやたらうるさい音が響いてくるのだ。朝の5時だというのに、信じられない。

 ……たしかに私も、ゴルフに備えた準備運動で、≪ちょっと≫音を立ててしまったかもしれない。でもね、だからって音で反撃してくることないじゃない! 直接言ってこいっていうのよ。まあ、いいわ。そっちがその気になら、準備運動に磨きをかけてやろうじゃないの。

『新発想ゴルフ練習術』に、「振り遅れを矯正してロングクラブに自信を」持つドリルが載っている。そのうちのひとつが、――胸を開かないで左へ体重移動する――練習だ。

 解説の永井延宏プロによると、――振り遅れるかどうかはダウンの開始部分で決まる――。――ダウンの初動で体が開くと手、胸の動きがワンテンポ遅れる――そうだ。

 その悪い動きを改善するには、壁際に体の左サイドを向けて練習するといい。クラブを持たず、両手のひらは開いたままで、トップをつくる。そして、――胸を右に向けたまま体全体を壁まで移動させる――のだ。

 ポイントは、――左肩を下げたまま体の左サイドを壁に軽くぶつけるようにする――こと。

 私は力加減をしらない。≪軽くぶつけるように≫がうまくできず、ついつい、体当たりしてしまっていた。しかし、(お隣さんに迷惑掛けちゃってるかしら? 後で菓子折り持って謝りにいかないと)とまで考えていたのに、反撃に出てくるなんて。

 私は手にクラブを握り、このドリルを再開した。体とクラブを、思いっきり、隣に向かってぶつけてやるんだから!

マンネリゴルフじゃ上手くなれん

『マンネリゴルフじゃ上手くなれん』
山本信弘
●B6判・並製・本文192頁
●1470円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊

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 俺はあくびが出てきた。向かいの美人OLを覗き見していたのだが、彼女はいまや顔を真っ赤にして、壁に体当たりしている。その鬼のような形相は、色気などあったものではない。

 その壁の向こうでは、中年のおやじがやはり顔をタコのようにして、ボールを繰り返し繰り返し叩きつけている。おやじがボールを投げ始めてから、かれこれもう30分が経過した。最初は笑って見ていたが、さすがに飽きるというものだ。

 俺もそろそろ、ゴルフの練習を始めよう。俺は持っていた双眼鏡を≪靴ベラ≫に持ち替えた。

『マンネリゴルフじゃうまくなれん!』に載っているドリルで、「ダウンスウィングからインパクトにかけて手の使い方、力の入れ方」がわかる。

 やり方は簡単だ。靴ベラの上にボールを乗せて飛ばすだけだ。――インパクトの瞬間に余計な力を入れると、ボールは靴ベラから落ちてしまい、ミスになる――。

 実は、美人OLが毎朝、靴を履く前に練習しているドリルだ。彼女を観察しているうちに、いつのまにか俺まで、ゴルフにのめりこんでいた。まあいま、怒り狂っている彼女を見れば、ゴルフの方がよっぽど魅力があることはたしかだ。


 

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