ゴルフの図書館
BOOKS 19番ホール
2006.8.11

犯人はお前か!?


『タイガー・ウッズも震えてる。』


〜♪15、16、17、と、私のスコアは暗かった♪〜
 今日こそ目標の80台に手が届くと思ったのも束の間、終盤の15、16、17番ホールで、ガタガタと調子が崩れてしまった。しかし、
〜♪過去はどんなに暗くとも、最終パーなら、89!♪〜
 まだ救いはある。次の18番でパーさえとれば、ギリギリ80台だ。ここは何としてでも、リズムを取り戻したい。こうなったら頼みは≪アイツ≫しかいない。どんなときでも冷静でいられる、アイツの助言を聞き入れながら、プレーするしかないだろう。私は一緒にいるアイツに声をかけた。


『タイガー・ウッズも震えてる。』

ジオ・ヴァリアンテ
●B6判・並製・本文200頁
●1365円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊




「頼む。何としてでも次のホールはパーをとらねばならない。助けてくれ」
 アイツは笑みを浮かべて「どうしよっかな〜」と私をからかった。くそう、腹が立つが、ここはぐっとおさえよう。どうせあと1ホールだ。

「頼むよ。18番のグリーンは、15番と同じ2段グリーンだろ? 調子が狂い始めたのは、そこでパッティングに5回も費やしたことがきっかけだったんだ。また同じように何度も打ってしまったらどうしようと、不安が離れないんだよ」
 私は頼む! と頭をさげた。

「じゃあまず、≪〜したら、どうしよう?≫って考えをやめるんだね。『タイガー・ウッズも震えてる』(ゴルフダイジェスト社刊)によれば、それは≪まずい問いかけ≫なんだ」
「まずい?」
「そう。ミスしたらどうしようったって、解決法は見つからないじゃないか。≪よい問いかけ≫っていうのは、明確な答えを自分で出せて、プラス思考へと転じられるものだよ。たとえば、≪このラウンドで君の目標は?≫」

「80台を出すこと!」
「80台を出すためには?」
「18番でパーをとる!」
「パーをとるためには?」
「フェアウェイをキープして、セカンドショットでグリーンに乗せて、パットを2打以内で決める」
「それを実現するための、一番の課題は?」
「2段グリーンを失敗しない」
「よし、2段グリーンの対策は?」

 
伊沢利光の結論[アプローチ&パター]

『伊沢利光の結論[アプローチ&パター]』
伊沢利光
●A5判・上製・本文192頁
●1890円(税込)
●池田書店刊

「えっと……」
 言葉に詰まってしまった。アイツはがっくりと肩を落とす。

「ダメじゃん! せっかくいい感じで掛け合いできてたのに、惜しいなあ」
 ……すまない。やっぱりお前の力が必要だ。アイツは続けた。

「今のようなシンプルな問いかけに心が自動的に反応するようになれば、目前の目標に集中して、震えを恐怖ではなく、バネにすることができるそうだよ。それにほら、2段グリーンの対処法は先日じっくり読んだはずじゃないか」

 読んだっけ?

「ああ、もう。だから5年以上も90台止まりなんだよ。伊沢プロだよ、伊沢プロ!」
「そっか、『伊沢利光の結論[アプローチ&パター]』(池田書店)だ。たしかに二段グリーンの対策法を読んだ」

≪1≫ まず、段差を無視して、平らな状態での距離を把握する(仮に5メートルとする)。
≪2≫ 段差がどれくらいの影響を与えるのか、段差の大小やグリーンの速さなども考慮しながら――段差周辺を歩いて考え、感じ取る――。
≪3≫ ≪2≫の観察をもとに、――段差だけを独立して考え、この段差を乗り越えるには何メートル必要なのか(下りはその逆に、この段差はボールを何メートル転がすのか)と考える――(仮にプラス5メートル分ののぼり坂とする)。

≪3≫ ≪1≫と≪3≫の距離を足し引きする(例では5+5で10メートル)
≪4≫ 段差を考えずに、計算した距離感を信じて打つ(ここでは10メートル)。ストローク方法は平らなときと同じ

 私が手順を思い出したのを見計らって、アイツが言った。
「2段グリーンの対策は?」
「とにかく段差をよく観察する! 15番では慎重に打っているつもりが、適当だった。距離の足し引きじゃなく、打つ強さばかりに気をとられていたよ」

「これでもう大丈夫だね。いま口にしたことを忘れないでね」
「あっ」
 アイツは消えた。

週刊ゴルフダイジェスト8月22・29日合併号

『週刊ゴルフダイジェスト8月22・29日合併号』
●360円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊

――

「おい大丈夫か?」
 仲間のひとりが、うつむいてうずくまっていた私を抱き起こした。
「べつに大丈夫だよ。もう一人の自分と話していただけだから」
「は?」

「あれ、『週刊ゴルフダイジェスト8/22.29日合併号』『新モダンゴルフ』読んでない? 流れのいいゴルフがテーマで、流れをつかむには、≪もう一人の自分を作る≫ことが必要だってあったんだ」

 江連プロによると、――自分を冷静に見ること――ができ、――自分の「流れ」を見るもう一人の自分――をつくる。――そしてミスをしたら「オイ…流れが悪くなりそうだから深呼吸しろ」とか「背筋を伸ばせ」とか言わせる――。

 そうして――体や気持ちをニュートラルな状態に戻して仕切り直しをすることが――流れを保つためには大切であるらしい。

「ふうん、ま、次でバーディとれば念願の80台だものな」
「バーディ? パーだよ」
「え? 俺のスコアカードだと、お前はいまトータル86だよ」

 私は一瞬の間凍りつき、慌てて数を数え直した。
「ほ、本当だ。86だ。どこかで数え間違えたんだ」
「これじゃない? パー3の3番ホールのところ、パーとった3の下部分がかすれて、2とも読める」

 めまいがした。バーディ。パーだってプレッシャーだというのに、バーディ。いま手にしたはずの冷静さは、すぐに吹き飛んでしまった。おいアイツ、アイツ! どこへ行った! もう一回出てきてくれ!


 

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