「頼む。何としてでも次のホールはパーをとらねばならない。助けてくれ」
「頼むよ。18番のグリーンは、15番と同じ2段グリーンだろ? 調子が狂い始めたのは、そこでパッティングに5回も費やしたことがきっかけだったんだ。また同じように何度も打ってしまったらどうしようと、不安が離れないんだよ」
「じゃあまず、≪〜したら、どうしよう?≫って考えをやめるんだね。『タイガー・ウッズも震えてる』(ゴルフダイジェスト社刊)によれば、それは≪まずい問いかけ≫なんだ」
「80台を出すこと!」
「えっと……」
「ダメじゃん! せっかくいい感じで掛け合いできてたのに、惜しいなあ」 「今のようなシンプルな問いかけに心が自動的に反応するようになれば、目前の目標に集中して、震えを恐怖ではなく、バネにすることができるそうだよ。それにほら、2段グリーンの対処法は先日じっくり読んだはずじゃないか」 読んだっけ?
「ああ、もう。だから5年以上も90台止まりなんだよ。伊沢プロだよ、伊沢プロ!」
≪1≫ まず、段差を無視して、平らな状態での距離を把握する(仮に5メートルとする)。
≪3≫ ≪1≫と≪3≫の距離を足し引きする(例では5+5で10メートル)
私が手順を思い出したのを見計らって、アイツが言った。
「これでもう大丈夫だね。いま口にしたことを忘れないでね」
――
「おい大丈夫か?」 「あれ、『週刊ゴルフダイジェスト8/22.29日合併号』の『新モダンゴルフ』読んでない? 流れのいいゴルフがテーマで、流れをつかむには、≪もう一人の自分を作る≫ことが必要だってあったんだ」 江連プロによると、――自分を冷静に見ること――ができ、――自分の「流れ」を見るもう一人の自分――をつくる。――そしてミスをしたら「オイ…流れが悪くなりそうだから深呼吸しろ」とか「背筋を伸ばせ」とか言わせる――。 そうして――体や気持ちをニュートラルな状態に戻して仕切り直しをすることが――流れを保つためには大切であるらしい。
「ふうん、ま、次でバーディとれば念願の80台だものな」
私は一瞬の間凍りつき、慌てて数を数え直した。 めまいがした。バーディ。パーだってプレッシャーだというのに、バーディ。いま手にしたはずの冷静さは、すぐに吹き飛んでしまった。おいアイツ、アイツ! どこへ行った! もう一回出てきてくれ! |
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