ゴルフの図書館
BOOKS 19番ホール
2006.8.4

犯人はお前か!?


『ゴルフ[ジュニア]ブック』


「お前は天才だ!」
 練習場で、父さんが叫んだ。周りの人たちが、僕ら親子をじろっとにらむ。そんなことには構わず、父さんは僕のやる気をたぎらせようと必死だ。
「いいぞ、いいぞ。お前のスウィングはとってもきれいだ。さあ、もう一回打ってみろ」
 いやになっちゃうなあ、もう。小学生の僕が、初めての割にちょっと飛ばしたぐらいで、父さんは有頂天になっている。だけどね、父さん。あなたはほめているつもりでも、実は僕をまったく甘く見ているんだ。 


『ゴルフ[ジュニア]ブック』

●B5判・並製・本文112頁
●1000円(税込)
●ゴルフダイジェスト社刊




 僕は父さんが思う以上に勉強家だ。一週間前に、練習場へ行く約束をしてから、僕は子供向けのレッスン書を読んで、あらかじめ予習しているんだ。

 塾で一番美人の先生に、「どんなことも、《予習・復習》が大切よ」って散々言われているからね。僕は美人の言うことは、何だって聞いてしまう。

 それはともかく、昼間に父さんの書斎へ忍び込んでは、父さんがすでに買い揃えている本をちょっとずつ、ちょっとずつ読み進めていった。

 たとえば、『ゴルフ[ジュニア]ブック』(ゴルフダイジェスト社刊)を読んで、僕は毎日、タイガー・ウッズの≪モノマネ≫をしてきた。

「キミたちはモノマネの天才です」といって、タイガー・ウッズ選手と宮里藍選手を見本に、連続写真をみせながら、どこを真似たらいいのか教えてくれているのだ。

 タイガーであれば両足を広げた下半身が、きれいなAの形になっていて、体の中心が動かない。右半身側(目標方向に向かって)から写した写真では、上げるときと下ろすときとで、クラブが同じ場所を通っていることがわかる。

 
ジュニアゴルフ

『ジュニアゴルフ』
新井真一・監修
●B5変型判・並製・本文160頁
●1365円(税込)
●池田書店刊

 このタイガーを真似て素振りをするとき、僕は『ジュニアゴルフ』(池田書店刊)にならって、タオルを振っていた。

 タオルの片方の端を結び、タオルがたるまないように振る。僕の家は賃貸マンションだから、クラブを振り回して壁に傷でもつけたら大変だ。あとで敷金が返ってこなくなっちゃうからね、ってこれは母さんの口癖。

 また、ハンガーを使ったスウィングチェックもある。

《1》ワイヤーハンガーを「くの字」につぶす
《2》片方の端に、数本の乾電池や鉛を挟んでガムテープで固定する。
《3》重り(乾電池など)のついていない側をにぎって素振りする。

 左右対称のスウィングを心がけて、「ブラーン、ブラーン」と力まず、ボールに当てに行くクセがついていないかどうかを確認する。

 このスウィングチェックとともに、毎日タイガーを思い浮かべて素振りし続けてきたおかげで、父さんに「お前のスウィングはとってもきれいだ」と言ってもらえたんだろう。

 とそこへ、父さんが大騒ぎしていたせいか、《教え魔》とおぼしきおじさんが近づいてきた。
「お子さん、いいスウィングしてますね」 

 このおじさんはさっきまで、隣にいたお姉さんに、しきりとレッスンしようとしていたのだ。あまりにしつこくて、お姉さんはとうとう帰ってしまった。今度は標的を若い女の人から子供に変えてきたようだ。

 しかし、父さんは「いいスウィング」というほめ言葉にすっかり気をよくしてしまっている。
「実は今日初めてクラブを握らせたんですよ。その割に、よく飛ばすでしょう?」
 少しは謙遜したらどうだろう。父さんは単純だなあ。

「ほう! そりゃあ、すごい。それじゃあ、僕、もう少しコックをつけてごらん」
 教え魔おじさんは、さっそく僕に近づくと「こうやって、手首を曲げるんだ」といって無理矢理に僕の腕をつかみ、ひねり上げた。
 いてて、こいつ、見てろよ。

易しいゴルフ57のツボ

『わが子をタイガーにする方法』
千葉晃
●A4変型判・並製・本文120頁
●1300円(税込)
●河出書房新社刊

「なんで? ねえ、おじさん、僕は手首を曲げてるつもりだけど、これじゃ足りないの?」
「ああ、もうちょっと曲げた方がクラブのスピードが上がるよ」
「なんでスピードが上がるの? それにあと何度くらいあげればいいの?」
「何度ってそりゃ……5度くらいかなぁ?」
「5度! そんなちょっとの違いでスピードが変わるんだ。へえ。それでスピードはどれくらい変わるの?」
「それは、その、5m/sくらい……?」
「数字を言われてもピンとこないから、もっとわかりやすく教えてよ。かめさんがうさぎさんのスピードになるとかさぁ」
「かめさんがうさぎさんて、それは……。君は勉強熱心だねえ。おじさんの手には負えないよ。じゃあ、頑張ってね」

 へへ、どんなもんだい。教え魔おじさんはぴゅーっと逃げていった。

『わが子をタイガーにする方法』(河出書房新社刊)に紹介されていた「教え魔の撃退法」だ。たいていの教え魔は、3回ほど「なぜ」と聞き返せば、去っていく。

 それにしても教え魔おじさんにコーチ役をとられかけたっていうのに、父さんは黙って見ているなんてひどいや。それとも、そろそろ僕のスウィングを見ているだけじゃ飽きてきたのかな。仕方がない。

「ねえ、お父さん。僕練習しすぎてちょっと疲れちゃった。休憩するから、その間にお父さんのスウィングを見せてよ」
「そうかぁ? じゃあ、ちょっと見本に打ってみようかな。ちゃんと見てるんだぞ」

 父さんはにっこり、すっごく嬉しそうに、自分のキャディバッグからドライバーを抜いた。『ゴルフ[ジュニア]ブック』によれば、練習で集中力を切らさないためには「アメとムチ」が必要らしい。教える側の父さんにも、「アメ」をあげなくちゃね。ふ〜っ、大人に付き合うのも楽じゃないよ。


 

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