「警部、見つかりました! コンビニ強盗犯です!」
どうやら何事かの事件に巻き込まれているようだ。
「何が誤解なものか。身長180センチ程度、痩せ型、紺色のジーパンに、白いTシャツ姿、年齢は30歳前半から半ばくらい。すべて目撃談と一致している。お前が強盗犯に違いない!」
「だったら聞こう。これは何だ?」
「これが、従業員をおどした刀だな?」
無罪を証明するために、私は無我夢中で説明した。
『マンネリゴルフじゃ上手くなれん!』は、スウィング中の≪切り返し≫をテーマにしたレッスン書だ。
ユニークな道具を使った練習法が特徴で、この刀は、――トップからダウンで行う「支点を手元から離すという動き――を理解するために使用する。
すなわち、――イメージとしては、クラブのかわりに刀を持ってスリークォーターのトップまでいったら、サヤはトップの位置に残し(サヤを動かさないで)、刀だけをスッと抜き取るようにダウンスウィングを開始する――。
練習場では、親しい従業員に刀のサヤを持ってもらう役をお願いした。彼に頼めばそのことを証言してくれるだろう。
「ふん、いまいち納得できないが、まあいい。刀のことはとりあえず置いておく。しかし、このゴムチューブはどう説明する? クラブのすき間にさりげなく忍ばせていたようだが、これで貴様は、従業員の首をしめたんだろ! まあ、刀と一緒で脅し目的だったようだがね。従業員は軽症で済んでいるそうだからな」 私は再び説明した。ゴムチューブは≪たすきがけ≫に用いるためのものだ。 『ボールを打たずに上手くなる!』(ゴルフダイジェスト社刊)で解説されているが、――ゴムチューブを使って、たすきがけすることで、自然に肩甲骨が上がった状態になって、腕自体も高く上げやすくなる――。 その状態でスウィングすれば、≪理想的な高いトップを実現≫するために最も必要な、肩甲骨の柔軟性を高めてくれるのだ。 「ストレッチは日々の積み重ねが大事なんです。練習場へは必ず持っていくんですよ」 涙ながらに訴えたが、それでもまだ警部は怪しんだ目つきで私をにらみつけてくる。もう、ダメだ。私の気力はどんどん萎えていった。そのとき、私の腕をつかんでいる警察官が大声をあげた。
「警部! キャディバッグのポケットを調べてください! ≪かなづち≫のようなものがのぞいています」
「そ、それは……」
「やはり貴様は怪しい! 警察までこい!」
とそこへ、けたたましいサイレン音が鳴り響いた。警部のもとへ無線が入る。 警察の二人は、私へ謝罪することも忘れ、一目散に駆けていった。まったく、とんだ目に遭ったものだ。 そうか真犯人はきっと、さっきぶつかった男だろう。そういえば、俺と似たような背格好をしていた気もする。あの慌てようは間違いない。 ふふ、それにしても、俺が強盗犯だって? 俺はそんな手洗い仕事は好まない。ましてや人の首を締めるなんてもってのほかだ。それに何より、俺の仕事に道具はほとんど必要ない。必要なのは、この口だけ。そう、俺は詐欺師なのだ。 |
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