「あ〜ぁ、ラフに入っちゃったね」
「何があ〜ぁ、よ。グリーンに乗せていたらバーディのチャンスがあったけど、ラフからに入ったら無理だって言うの? むしろ、チップインバーディを決めた方がカッコイイじゃない」
言うのは簡単だが、可能性は低い。ところが、彼女は見事にそれを成功させ、バーディを取ってしまったのだ。
「ほら、みなさい。果敢にチャレンジする人に、運は味方をするのよ。ふふふ、実はここ数カ月、アプローチの練習を熱心にやっていたの。その成果がいま、実を結んだってわけ」
「清元登子プロの『魂のレッスン』(ゴルフダイジェスト社刊)の中に、――ミスしても、腐らず、背筋をスッと伸ばして次のショットに向かってごらんなさい。案外うまくいくものですよ――ってアドバイスがあったの」
「でも、ミスしたら落ち込んじゃうな」
「姿勢と歩き方ぐらい、ね。僕も参考にしてみるよ。たしかにミスした暗い気分で、だらだら歩いて次のショットに向かっても、いい球は出ないものな。リズムが崩れているからだね」
「それに、福嶋晃子プロの『ゴルフアッコの秘密』(日刊スポーツ出版社刊)にも、プロとアマチュアの違いは『気迫』だって書いてあったわ。パーを取るにしても、パットを沈めるにしても、成功できたらいいな、ではなくて『寄せる』『入れる』っていう気迫が必要なんですって」 「でも、でもってあなたって本当に内向的な性格ね。中途半端に寄せたい『なあ』と思うよりも、絶対に寄せるんだ、って強く思った方が、必要なことが見えてくるはずよ。たとえばルーティンでリズムを思い出したり、スウィングを確認したり、何より球筋をイメージしたりってことよ」 「君、ゴルフを始めたばかりなのに、向上心はシングル並だね」 「ふふ、さっきの『魂のレッスン』に――無謀とチャレンジは違う――って書かれていたの。いいスコアを出すためには、フェアウェイキープだとか『安全第一』が肝心だろうけど、ゴルフを楽しむためには――たまには失敗しても構わないぐらいの冒険心を持ってやってみること――だって。それでミスしても、『これがゴルフ』って思えばいいって」 「要するに、ラフやバンカーに入れることも、ゴルフの面白さのひとつと考えればいいわけか」
「そうよ、東尾理子の『ファッショナブルゴルフ』(PHP研究所)を見てもわかるけど、女性はファッションだとか、上手下手にかかわらず、ゴルフを楽しもうっていう心がけが大きいのよ。その前向きな気持ちの結果として、プレーも向上するんじゃないかしら」
「でもスコアを伸ばしたいって思うと、そう気楽にはいられないな」 「でも、っといけね、いくら練習していたとはいえ、グリーンに乗せた方が楽だものな。僕は間違いなく、同じ状況で、『ちぇっ』と舌打ちしてしまうな」 「あなたがいつまでもスコアを縮められないのは、グリーンに乗せられなければ、二度とゴルフが出来ないような過剰なプレッシャーを背負って、それが原因に力んで外せば、がっくりとしてしばらく立ち直れず、そのままふて腐れて次のショットも失敗する。どんどん、スコアは悪くなる。度胸もなければ、ゴルフを楽しもうっていう愛嬌も感じられないわ。まずはその、『でも』の口癖をなくすことね」
「(でも)俺の方がスコアはいいのになあ」 |
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